京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

ボランティア以上に過重な東京五輪労働への懸念

東京オリンピックパラリンピックのボランティアは、とりあえず目標の人数には達したようです。

www.nikkei.com

一方で、そのうちの何割が離脱するのか、実際に来てくれるのか、さらには専門性の高い運転などの移動サポートなどの集まりにくい業務の補充人員など、まだまだ課題は多いと思います。

 

外国人材が多いことも懸念されていますが、国際的なスポーツボランティアの界隈では、わりとマネジメント層は慣れているのではないかと思われます。簡単なコミュニケーション程度なら、スタッフ同士でもすぐできるようになるでしょうし。

lazyplanet.hateblo.jp

 

ところで、ボランティアに参加する人は、ある程度、利他的な意識もあるでしょうし、珍しい経験ができるという利己的な目的も達成でき、業務量に対する負担感は少ないのではないかと予想しています。本当に大変だと思ったら、それこそ簡単に辞めるでしょう。

一方で、簡単に辞められないし、責任を重く背負っているのが、普段から東京で働いている、あるいは期間限定で送り込まれるはずの地方の労働者です。宿泊・清掃・飲食・交通・警備・小売等のさまざまな業種の人たちは、このオリンピック期間は大変な繁忙期になることが予想されます。

 

そのあたりのことが、下記の連合総研のレポートにまとまっているので、ご紹介です。

オリパラを支える人々のやりがいを守る−そのための健康安全対策−(PDF)

 

1964東京五輪時の宿泊業から

なかでも興味深いのが、帝国ホテルの労働組合の執行委員長の寄稿です。

帝国ホテル労組30年史によると、帝国ホテルの料理長が選手村の料理長を任されたものの、ホテル業界のコックだけでは手が足りず、全国からかき集められた150名もの洋食店のコックたちとの共同作業であった

 とのことです。

忙殺される地方のコックたちは、我慢の限界を越え、総引き揚げ寸前であった。現場責任者は社長に詰め寄り禁酒令を解かせ、そして墨字で「オリンピックは日本の面目」と大書きし、コックたちにこう言った。「飲んでもいいから外には出るな」と、翌朝見ると「空瓶が並んでいるわいるわ」責任者は思わず笑いだしたという。

全然笑い話ではないですね。日本の面目のために、忙殺されながらもなんとか乗り切った当時の状況が伺えます。

 

現在東京のホテルのベッド数が10万ほど、外国人観客の一日当たりの客数が8万人と予想されており、ボランティアの宿泊先とかを考えなければ、一応ベッド数は足りるようです(←足りてない)。

もちろん、稼働率はずっと100%です。ホテル内に滞在する時間帯もおそらくバラバラになるため、通常よりも長時間スタッフを配置する必要も指摘されています。

加えて、10000人以上の選手と関係者が選手村に宿泊します。その数は約17,000床、その管理運営は誰がするのか不明ですが、清掃・メンテ人材の取り合い合戦が予想されます。

レポートでは、現状のホテル業界の就労状況を踏まえると、現スタッフの長時間労働が助長されるのではないかとし、勤務インターバル制度の導入などを訴えています。

 

宿泊業だけでみても、この状況です。

 

リクルートワークスは、大規模かつ一過性の雇用が81.5万人分生まれるとしています。そのうち、約30万人は建設業なので、2020年の五輪期間に必要な雇用は約50万人と推計されます。こうした短期的な雇用を一番歓迎しているのは、派遣業などの人材業界だと思いますが、ボランティアに10万人近い雇用を取られつつ、さらにさまざまな業種で人材の取り合いとなり、集まらなければ、既存のメンバーで不足分を補うために働くことになります。

オリンピックがもたらす雇用インパクト | 就業構造・人材移動

 

下記の記事では、ボランティアの11万人も加味して92万人としていますが、懸念事項は同じです。そして打開策は「外国人労働者」だそうです。なぜ、いま国会でホットなのかは、このへんの事情も考えられたものですね。

www.yomiuri.co.jp

 

ボランティア募集が既に始まっていて人材の青田買いが始まっていることを考えると、短期間のアルバイト募集といえども、こちらも早めに募集を開始しないと人材不足のツケは現スタッフが負うことになります。

その先にあるのは、オリンピックなんてやらなきゃよかったという後悔で、同じことが大阪万博でも起きるのではないかという不安しかありません。本来、子どもたちに夢を見せる場であるはずのところで、大人が負の感情を見せてしまうのも、あまりいいものではないですね。

 

こうした文字通りお祭り騒ぎの五輪期間を、個人レベルで可能な限りストレスなく過ごすために必要なのは、「東京以外の場所で過ごすこと」です。リモート勤務でもサバティカル休暇でも、観光客の減少が予想される地方に行けば、歓迎されるかと思われます。尤も、地方でも東京への出稼ぎ人員の流出で、人手不足かもしれませんが。

 

ボランティアのことばかりが注目されがちですが、ふつうに働いている、ふつうの人たちも、とっても大変なことが予想される、というのは、懸念事項として考えておきたいです。