京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

長い長い放課後のはなし【学童】

『放課後』の子ども

”子どもは幼稚園や保育園、小学校が終わった後の放課後、どのような環境でどのように過ごすのが理想的なのだろうか?”

と、疑問を投げかけるのが、下記の記事です。

toyokeizai.net

 

うちの子どもは「学童保育」に預けていますが、親が専業主婦・主夫などで、学童に入らない子どもたちは、てきとーに集まって子どもたちだけで遊んだり、友達の家に行って遊んだり、としているようです。

 

決められた場所・時間で遊ぶ「学童保育」と、自由度の非常に高い「放課後の子ども」だけの時間。どちらがいいか、という対立構造にするのは的外れにしても、それでも、どういう時間・場所が理想なのか?という問いは考えていく必要があります。

 

小学校低学年の場合、授業時間も短くすぐに放課後の時間になります。

国学童保育連絡協議会の調査では、子どもが小学校にいる時間が年間約1,218時間、学童保育にいる時間が年間約1,633時間と、学童保育にいる時間のほうが圧倒的に長い、という結果となっています。(学童保育に関する実態調査

 

それだけ長い時間を過ごす「放課後」という場の重要性はもっと知られるべきです。

 

学童保育の現状

そもそも学童保育とは、

児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第6条の3第2項において、

「小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業」

放課後児童クラブ運営指針(PDF) 

として規定されています。

平成27年の子ども子育て支援法によって、第 59 条に規定する「地域子ども・子育て支援事業」の 1 つとして位置付けられ、市町村子ども・子育て支援事業計画に従って実施されることとなりました。

また、『放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準』という省令において、いくつかその基準が定められています。

現在は、省令で対象が”留守中の小学生”とされていますが、未整備な現状も多く以前と同じく小学3,4年生までが対象の自治体も多いかと思います。

また、省令第10条で、”放課後児童支援員を置かなければならない”と定められていますが、その支援員の定義はかなり緩いものです。

非常に見づらいですが、下表が支援員の資格状況です。

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平成 29 年(2017 年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況

なお、支援員は一事業所あたり2名以上、とされていますが、1人を補助員に置き換えることも可能、補助員は特に資格を必要としません。

また、支援員の雇用形態別の状況は下表です。

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(※同調査より)

賃金については、内閣府の28年度のものによると、

  給与 平均勤続 平均年齢 集計人数
月給制 270.3万円 8.3年 42.8歳 1,834人
時給制 76.2万円 4.6年 48歳 3,544人

のようになっています。

月給制・時給制の違いが常勤・非常勤ではなく、非常勤でも月給制、常勤でも時給制があるのがややこしいのですが、両者を平均すると、約140万円程度。

 

親の負担金額は下記の表のとおりです。

保育園に比べれば、かなり割安感があるのではないでしょうか。

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それでいて、年間の開所日数は、非常に多いです。

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平日だけでなく、土曜日や学校の振り替え休日の際も開所しているため、年間の開所時間は非常に多く、それだけ多くの時間を学童の子どもたちは過ごすことになります。

冒頭に紹介したとおり、学童にいる時間のほうが長いのです。

 

だからこそ、その『質』の部分が問われてくるところになります。

学童の質とは?

学童の運営・設置基準はもともと法整備のない中拡大したという経緯もあり、かなり緩やかな規定になっています。そのなかで、地域の中にある人的・環境資源に合わせて保護者や地域の自治会やボランティア組織が協力して作り上げてきた草の根的な側面も持っています。

学童の運営基準に関する専門委員会で委員長を務めた柏女氏は「子どもの最善の利益を保障するための質の確保、向上」「地域の実情に応じた多様性に対する配慮」の両立が必要であったと述べています。

高すぎる基準を設定すれば、切り捨てられる放課後児童クラブが多くなり、低すぎる基準では基準の意味がなくなり、質の向上にはつながらない

そうした難しい判断の中で、運営基準が作られています。

その基準は十分に子どもの利益に適う高いもので、それを満たす水準にまで達した学童はおそらく、それなりに快適なのではないでしょうか。

ただ、その基準を満たすのに必要な人員の処遇保障がされているのかどうかは、やはり疑問です。

 

つい先日の2018年9月15日、文科省厚労省から『新・放課後子ども総合プラン』として放課後児童教室・放課後児童クラブ(学童)の、5か年プランが策定されましたが、そこでもあまり、質については問われていません。

「新・放課後子ども総合プラン」の策定について:文部科学省

 

とにかく待機状態のものを解消する、というのが第一優先の課題とされ、その内容の充実・保育の質の向上、といったところが非常にあいまいで、支援員の確保、待遇、資質などについては、ほぼ触れられていません。

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支援員の現実と親の理想

上記、意図的に支援員の待遇、親の負担金額、開所時間、とデータを並べたうえで、『質』の担保の難しさに触れました。

 

学童にそもそも入ることのできない子どもも多く、その待機児童の解消のために量的な拡充がなされている以上、支援員の確保と待遇改善は目下の課題になると思われます。

職員の待遇改善とともに質を上げることは、放課後を過ごす多くの子どもたちにとって有益なものになります。

もちろん、開所時間が長く、子どもたちの居場所を作ってくれる、ただそれだけでありがたいことです。

共働きで放課後の子どもの面倒を見られない家庭は、どうしても学童に入れるしかないわけで、そこを理想の環境にするしかないのです。逆に専業主婦家庭で、それでも子育ての負担が大きく学童に入れたい、という希望もあっていいと思います。

学童以外の安心して子どもたちが遊べる環境があれば、それに越したことはないです。日本でも従来はそうした地域の場があった、というのは冒頭の記事でも触れられています。

その代替環境や代替機能の構築を学童は求められているわけですが、擬似的な環境を作るのは、自然にあるそれらを利用するよりもずっと高度で難しいことだと思います。

 

これから、長い間まだまだお世話になることが多い学童なので、なるべく支援員の人と仲良く、一緒にその運営のことを考えていけたら、と思います。

 

子どもの放課後を考える―諸外国との比較でみる学童保育問題

子どもの放課後を考える―諸外国との比較でみる学童保育問題

 

 

【参考】

放課後児童健全育成事業の展開と課題(PDF)国立国会図書館レファレンス

歴史・現行制度・課題など、とてもよくまとまっています。