京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

副業や複業から労働者を守るために

複業・副業・兼業。言い方はいろいろありますが、複数の収入を労働の対価によって得ることを、ざっくりまとめてここでは「副業」とします。

 

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「副業いいじゃん!いまどき、一つの会社に固執してそこからしか収入得られないほうがリスキーだよ」みたいな言説が多く飛び交っていますが、少し疑ってかかってみたくなります。

「みんな大丈夫?疲れてない??」と。

cybozushiki.cybozu.co.jp

それを考えるに至ったのは、上記の記事からです。

明石さんは、一度イベントでお会いしたことあるのですが、話も的確、気遣いも丁寧、文章も上手い、SNSでも人気、非常に優秀な広報です。仕事のできる人なので、なんでもそつなくこなせてしまいそうです。

実際に、週5フルタイムに加えての副業を行っていたそうですが、ある日突然会社に行けなくなった、とのこと。

私も同じように会社に行けなくなった人間なので、なんとなくは共感できます。彼女が強いのは、立ち直りが早いこと。ただ、本当に立ち直っているのか、大丈夫なのか、は外野の私には分かりません。

一度、精神的な調子を崩すと、その後どうしても崩しやすくなります。仕事をセーブしたから大丈夫、かどうかは本人にも分かりません。私は、「自分の思う8割の力のさらに8割くらいの力で仕事しろ」とカウンセラーにアドバイスされました。

わたしがこの件でもやもやしたのは、おそらくまだ寛解していない状態の彼女に、この記事を書かせて、「彼女のこの経験は私たちにとっても非常に有意義だった」と言ってしまっている彼女の会社の周りの人間です。

 

 

いや、美談化してないで、ルール化しません?

 

副業の労働時間管理は可能か?

最近頭を悩ませているのは、この時間管理です。

ほかの事業所で働いている、とかであれば明確に労働時間管理は必要になります。副業である場合には、おそらく時給制であることが多いし、労働時間は通算されて残業代が支払われる、ということが法律上も明記されています。

一方で、ブログやライティング、プログラミングなどのフリーランスとしての個人的な活動などはそもそも労働時間として管理されず、『自己申告制』になります。

「副業での労働時間を個人で記録し毎月上長に報告すること」と、いくら就業規則で明記していても、それが自己申告である以上、正確な把握はできません。

個人の副業を含めすべての労働時間の記録を義務付ける、という法律でもない限り、ひたすら働き続けて潰れる副業の犠牲者がまた現れるだけです。

 

副業中の労働災害はどうなるのか?

副業中に事故が起きて労災認定された場合、それは副業先の労災保険が適用されます。

逆に言えば、副業先の適用しかされません。賃金に応じて支払われる手当なども、副業先の賃金分のみです。

また、長時間労働でなにか病気を発症した場合も、副業の場合それが労災適用されないケースがあります。下記は厚労省の資料の抜粋ですが、単一事業所なら100時間の時間外勤務として長時間労働労務災害の関連性が認められるのに、副業しているとそれが認められません。

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 このままだと副業で過労で倒れたとしても、ただの自己責任で終わります。

 

このあたりは、現在も審議会で検討が行われています。

www.mhlw.go.jp

少なくとも、副業や兼業の流れを政府が推進するのであれば、このあたりの労災適用時間・賃金の合算は必須ではないかと思います。

主たる事業主が定めるべきこと

副業規定を就業規則に明記している会社もまだ少ないかもしれませんが。

・競業避止

・機密情報の漏洩禁止

・会社の名誉を毀損する行為の禁止

・社員への勧誘の禁止

・本業に支障をきたさないこと

・事前に所定の届出申請

このあたりは、普通に定めているのではないか、と思います。

加えて、

・毎月、副業時間を上長に報告

・合算労働時間における時間外勤務相当を月45時間以内に制限

・副業申請者のストレスチェックの義務化

などを加えるべきではないか、と。

労使ともに多少面倒が増えますが、長く安心して健康に働くための措置です。長期的にはこのほうがお互い不幸にならずに済むのではないか、と思っています。

 

また、詳しいガイドラインやモデル就業規則厚労省が提示しています。

www.mhlw.go.jp

 

副業自体は、たしかに労働者のリスクヘッジの側面もありますし、正社員としての安定した地位に就きながら、いろんな仕事にチャレンジできる働き方でもあるので、今後も副業を認める流れは今後も進むと思われます。

一方で、健康面で労働者を守る、という認識がまだまだ薄いところです。このまま副業を推進して、それで健康を害しても、「好きでやってるんだから自己責任だろ」とか言われるのもなんか怖いです。というか、会社側に都合よすぎ。

柔軟な働き方と正しいルールはセットで考えたいです。