「あたしおかあさんだから」の件
絵本作家の「のぶみ」さんは、個人的な好き嫌いでは「嫌い」です。
今回の件も、また「のぶみ」案件か、とそんなに興味はありません。
論点は、下記の記事で中野円佳さんが解説しています。
当たり前だけど、お母さんだからといって我慢することはないし、我慢せずに子育てしてもお母さんです。それはお父さんでも一緒です。
ブラック企業で働いていたら精神的にとても強くなりました、長時間労働でがっつり稼いでたくさん遊びました、それらは事実で正しくても、それを歌にした途端にブラック賛歌の根性論になります。
この件については以上です。
でも、子育てをしていて、これって自己犠牲のうえに成り立つものだよね、と思う場面は多々あると思います。
これについては、さまざまなメディアが記事にしています。
「子育ては自己犠牲なのか?」論
「子育ては自己犠牲なのか?」という言説は、これまでも何度も消費されてきた子育て世代にとって格好のネタなのです。
だからこそ、商業作家もそこに目をつけるわけですが。
2009年 ベネッセの調査より「4割の母親が自己犠牲は仕方がない」 東洋経済
2012年 主夫「ムーチョ」さんのブログ
2014年 「googirl」
2015年 「親の楽しみのために、週1でベビーシッターに預けることの賛否」
2015年 上の記事を受けての個人ブログ「こりつく手帖」
自己犠牲観は根強い
ちなみに、2016年のベネッセの調査((第5回 幼児の生活アンケート レポート[2016年]│ベネッセ教育総合研究所では、「子どものためには自分ががまんするのはしかたがない」という自己犠牲的な考えの子育て観の割合は増えています。
ただし、就業形態別にみる必要があるのと、母集団の母親の就業状況に注意が必要です。
まず、アンケート回答者は圧倒的に専業主婦家庭が多く、次いでパート、常勤と続きます。またパートタイム、専業主婦家庭での増加が顕著ですが、常勤者での子育て観の変化はほとんど見られません。
フルタイムの割合が05年に比べ、15年はほぼ2倍となっていますので、「自分の生き方も大切にしたい」と思い、フルタイムの仕事をしている女性は増えている、と解釈できます。
「自己犠牲」の価値観は、就業形態との相関が強いとも言えます。
家庭だけでなく、経済社会でのより多くの女性活躍を期待するのであれば、「子育ても大事だけれど、自分の生き方も大切にしたい」という雰囲気を醸成するほうがよいということになります。
もちろん、自己犠牲的な価値観が悪いということは絶対にありません。子育てにおいて、自己犠牲が全くないという状況もほとんど無いでしょう。
自己犠牲的な価値観が強まる背景には、先行き不安な現代での「子育て不安」、地縁・血縁等の希薄化、依然として残る男性の長時間労働など、様々な要因があると思います。それらを受けて、子どもを守ることを重視する生き方もまた正しい選択の一つです。
どちらの選択肢も尊重するという選択
自己犠牲を自分なりに受け入れて、そのうえで子育てにウェイトを置いて生きる、というのもひとつの選択肢としてあるべきですし、こうした論争においては、どちらかの価値観をつぶすのではなく、どちらの生き方も認めて、多様な選択肢を残していくことが望ましいと思います。否定された価値観で生きることもまた生きづらく、敵対するのもただ疲れるだけです。
「ガンガンいこうぜ」なのか「みんながんばれ」なのか「いのちをだいじに」なのか、どういう作戦で子育てをしていくのか、また時代や環境にあわせてどのタイミングで作戦を変えるのか。
時には自己犠牲をすることもあるし、そうでないときもある。喉元すぎれば熱さも忘れ、価値観も変わります。
日々そういうことに悩みながら、お父さんやお母さんは生きています。