京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

保育における親の参画のあり方

学童連絡会のはなし

先日、学童の保護者会の外部会議に参加してきました。

保育園のときも、こうした会議はあったのですが、公設公営の学童の多くは、「学童保育連絡協議会(学保連)」と呼ばれる組織に属しています。

市区町村、都道府県でそれぞれ市連・県連があり、全国的には全国連があります。

全国学童保育連絡協議会(ぜんこくがくどうほいくれんらくきょうぎかい)

全保連 全国保育団体連絡会

 

保育運動連絡会など、地域によって微妙に名前が違ったりするようです。「運動」の文字が入るとちょっと親からも市政からも警戒されやすいですね。

「運動」とあるのは、親や保育士の組合が関わっていることが多く、市への要望を出して保育の充実を図ってきた、という歴史があるからです。それはまさに保育の問題を訴える運動であり、良くも悪くも親のボランタリーな参画によってそれらが行われてきました。

 

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保育の質と親の参画

それはそれとして、学童も保育園も含めて「保育」において、親の関わりは『保育の質』にどのような影響を与えるのでしょうか

日本において、『保育の質』について語られるとき、主に議論になるのは保育者の資格・労働環境や、保育施設の面積や保育内容の基準などですが、OECDでは保育の質を高めるうえで重要となる政策課題を次のように上げています。

  1. 質に関する目標設定と規則
  2. カリキュラムや望ましい基準などの策定
  3. 保育者の資格、研修、労働環境の改善
  4. 家族や地域の参画
  5. 統計・調査・監査の充実

実際に日本では、親は保育サービスを利用する「お客様」とみなされ、保育園の保育者によってそのサービスの質が変わる、という見方が一般的ではないかと思います。が、OECDの見方では、親をパートナーとして位置づけることで、保育の質の改善に親の力が役立つ可能性を指摘しています。

 

(※参考文献 親が参画する保育をつくる 池元美香)

親が参画する保育をつくる: 国際比較調査をふまえて

親が参画する保育をつくる: 国際比較調査をふまえて

 

 

ここで、重要なのは親はお客様ではなくパートナーである、というところです。

お客様である親が、その意識のまま保育園にモノ申せば、ただのモンスタークレーマーとなってしまいます。顧客として、サービスの質を品定めして問題があれば批判する、というよりは、日々の保育や家庭での育児のなかで起こるさまざまな問題点を共有し、解決に向けて協議する、という参画の仕方が求められています。

 

 

非生産的なPTA

一方で、現状のPTAや保護者会などといった組織では、ベルマーク、学校の清掃などの下請け仕事、面倒な行事、送別会、役員など、親の負担に関する議論が多く、実際にまあ親は負担しかないです。あまりに非生産的な活動が多くて、保育や教育の質を向上させる、という本来的な目的が果たされていないように思います。

学校や園に対し親として対等に意見し教育・保育上の問題がないかどうかなどを共有し、解決に向けて一緒に協力する、といった本来の目的を果たさないPTAの活動は基本的には悪でしかないと思っています。

保育者の労働環境を改善してほしい、教育や保育に対してもっと予算を充てて欲しい、という具体的な議論にもっと時間を割くべきところを、ベルマークとかマジでどうでもいいことに議論を割かれるのは時間の無駄だし非生産的です。

親同士の親睦を深めるのもいいことですが、ベルマークの作業をやりながら表面的な雑談しててもそんなに仲良くなれないし、平日昼間に参加できない親はハブられてしまうというまた別の問題も起こってしまいます。

同じ保育園や学童に預けている親同士、悩みを共有できて、解決できるような関係を築くためには、日々の保育の問題について話し合うような場、少しでも生産的な議論ができる場があったほうが、より深い部分まで話せる気がします。

 

headlines.yahoo.co.jp

親の負担とメリット

現状、親はとても忙しいです。保育園や学童に預けている親は、たいてい共働きで、どちらか一方が長時間労働をしていることが多く、そうした非生産的な親の会・PTAには否定的な人が多いと思います。

ただ、だからといって、親の会・PTAを無くしてしまおう、というのもまた、かえって保育の質を下げかねないものとなってしまいます。

保育の質の向上に直接つながるものであり、親や預けている子ども自身にきちんとその費やした時間がメリットととして還元されるものであれば、親の参画を促すという議論も生まれるかもしれません。 

PTAをけっこうラクにたのしくする本

PTAをけっこうラクにたのしくする本

 

 

PTAや保連の負のイメージ

ようやく、冒頭の話に戻りますが、学童保育連絡協議会などのイメージも非常に悪いです。もともとは「運動」から始まったものであり、日本共産党的なイメージが強く、親からも市政からも訝しがられています。PTAの負のイメージについては、ネットウォッチャーの読者の皆様はよくご存じだと思います。

toyokeizai.net

そうした現状の組織への負のイメージが、ポジティブな親の参画の大きな障害になっている、というのが現在の日本の保育における親の参画状況となっています。

 

ではどうすればいいのか、という話になるのですが、とりあえず今回は問題提起だけで締めておきます。

 

もし、保育園や学童選びで悩んだりしている人がいれば、保護者会のような組織はどうなっているのか、どれくらいの負担感なのか、などといった項目についても、ぜひチェックしてみてください。

そして、もし余力があれば、それらを実りある組織に変えていってください。