子どもの好きな色、ダサピンクからの変化
小学校の授業参観に行くと、一年生のランドセルの色は、黒や赤はもはや少数派で、ピンク・キャメル・ラベンダー・グリーン・水色といったさまざまな色が、散り散りに(出席番号も男女混同なので)並んでいて賑やかでした。
誰が、どんな色を使ってもいい、という多様性は自由でいいなぁと思う反面、本当にそれは自分で選んでいるものなのか、実は不自由な選択をさせられていないか、ということも見えにくくなります。
『女の子は本当にピンクが好きなのか』の著者の堀越さんはピンク、水色、ラベンダーのパステルカラー3色を「ビッグ3」と呼んでいます。
実際、ウチの娘の持ち物の8割方が、このビッグ3です。あとは黄色とかでしょうか。
どんな色のものでも好きなものを使えばいいと思うのですが、子どもたちの好きな色は、本当に子どもたちが自分で好きと思っているのか、思わされているのか、どっちなんでしょうか。
子どもの好きな色
いくつか、「子どもたちの好きな色」の調査があります。が、見事にその結果はばらつきがあります。
1.「ピンク色が好き」な3-6才の女の子|ビデオリサーチ オープンカフェ
調査名:キャラクターとお子さまの日常生活についてのアンケート
調査時期:2015年11-12月
調査地区:東京30km圏(東京駅を中心として、半径30km圏に含まれる市・区・町・村全域)
集計対象:男女3-12才(N=622)
こちらの調査では、以下の図のような結果となっています。
男の子は青、女の子はピンク、というまぁ分かりやすい結果です。
女子の年齢とともに、ピンクが下がり水色がトップになります。男子の青は年齢別の変化はわずかですが、男女とも黒や白といったモノトーン色の人気も強まります。
2.<研究1部報> 「男女児童が好きな色」2014年調査から 一般財団法人日本色彩研究所 (対象:東京都と北海道の小中学生男女 886名(小学2・3年227名、5・6年192名、中学2年467名))
こちらの結果で、面白いのが「金」「銀」という色も回答に含んでいるところです。
その結果、男子の1位が「金」となっています。金色は、王冠、メダルなど輝かしいイメージからプラスの印象を受けているようです。
一方の女子は、水色が多数を占めています。
最後に、学研のデータです。こちらが2017年とわりと最新のものです。
1位 | 2位 | 3位 | ||
小学1年生 | 男子 | 青 | 赤 | 緑 |
女子 | ピンク | 水色 | 紫 | |
小学6年生 | 男子 | 青 | 黒 | 赤 |
女子 | 水色 | 青 | ピンク |
面倒なので、もう細かい数字は省略します。
男の子は不動の青、女の子のピンク→水色への変化という傾向はほか二つの調査と似ています。この調査では金や銀は低い順位となっています。
ピンクからの脱却
女の子では入学前・低学年→中・高学年となるにつれて、ピンク→水色という変化がおおむね見られます。このあたり、ウチの娘も今まさにピンクからの脱却期に突入しています。
『すみっコぐらし』などのキャラクターが低学年女子には特にウケていて、ウチの娘も例に漏れず、筆箱から下敷き、さらには夏休みの漢字ドリルなども『すみっコぐらし』です。キャラクターは見事にパステルカラーで、キャラものの中では落ち着いてるほうなのかな、まあいいかと思っています。
もともとウチにはプラ玩具は少ないほうなのですが、それでも幼児期の女子向けプラ玩具はほぼピンクです。体感的には安っぽいもののほうがよりピンクである気がします。幼児期の女子雑誌も「ピンク」という名前の雑誌があるほど、ほぼピンクで統一されています。
実際にピンクといってもいろいろあるわけで、派手なピンク、柔らかいピンク、温かいピンク、それぞれに使うもののことや意図をよく考えて作られたデザインのものも、もちろんその中にはたくさんあります。
しかし、明らかに低価格・低品質でつくられたような、女の子向けならとりあえずピンクでいいだろ、という投げやりな製作者の姿勢が垣間見える製品もあります。
そうした「とりあえず作っとけ」的なピンクのことをダサピンクと呼びます。
ダサピンクとは?
ダサピンクについては、その名付け親の宇野ゆうかさんのブログに詳しいです。*1
「ダサピンク現象」とは、決して「ピンク=ダサイ」という意味ではなくて、「女性ってピンクが好きなんでしょ?」「女性ってかわいいのが好きなんでしょ?」「女性って恋愛要素入ってるのが好きなんでしょ?」という認識で作られたものの出来が残念な結果になる現象のことを言います。
残念な結果になる、というのが重要なとこです。
使う人のことを考えているか、思考停止になっていないか、そういったデザインの基本を疎かにしている安易なピンクを批判し、盛り上がる出来事が以前twitter上で巻き起こりました。
(うちの子が描いた前衛的なウサギ)
ピンクの先にあるのは・・
子どものなかにも、やがて「ピンク」ってなんか安易でダサいよね、と思う時期がくるのでしょうか。というようなことを思わせる結果が、先に見たアンケート結果です。
確かにある時期にピンク好きだったはずの女の子がパステルカラーを好むように変化していく。しかし、我が家に溢れかえりつつあるパステルカラーの文具たちを見ると、その先には安易な「ダサパステル」現象が起こっているような気がします。*2
最近、ダイハツからトコットという車が出ました。平均年齢は20代後半、女性だけのチームで作られた車は、とてもシンプルなアースカラーの車でした。
この記事では、「カワイイ」を封印した、と紹介されていますが、とてもよく考えられた「かわいい」車だと私は感じました。そうそう、こういう車が欲しかったんだ、と共感する人も多いようで、発売1か月では目標の3倍売れたようです。
なにが「かわいい」のか、子どもにとってのそれは大人には分からないものですし、ピンクでもパステルカラーでも、好きに選べばいいじゃん、というのは本当にその通りですが、それが「不自由な選択」になっていないかどうか、注意深く見るのは大人の仕事かな、と思っています。
『スプラトゥーン2』 というゲームに、我が家の全員がハマっていますが、これはかなり強めの蛍光色をステージ中に塗りたくって敵を倒すゲームです。でも、とても洗練されたデザインですし、ふだん見かけないような色でも、娘にとっては「かわいい」ものとなっています。
「ピンク」しか選べない、というような時代は終わりつつありますが、その先のパステル沼にもご注意を。