親の価値基準で子供向け動画は排除されるべきか?
以前、こちらの記事が話題になりました。
まず我が家の状況ですが、子どもが1歳くらいの頃にiPadを購入。
子どもも触れる場所で共有していたので、小さいころからタブレットは自然に使っていました。
以前であれば「てべり」というアプリ、最近では「Youtube Kids」などを使っていますが、こうしたアプリでは検索をしなくても、あらかじめ設定された好きなカテゴリから子どもが自由に好きな動画を見ることができます。
虚無動画は、一度幼児向けの動画を見ると、「おすすめ」欄に表示されるようになります。虚無動画の再生回数は非常に多いものもあり、再生回数に応じて、レコメンドされるからです。
上述のアプリなどを使用することで、そうしたオススメを排除できます。
そのようにして、私は子どもの動画コンテンツを意図的に選別・排除しています。
さて、親の価値基準によって子どもに与えられる動画コンテンツは選別されるべきでしょうか?
幼児の好むテレビ・アニメ
とりあえず、幼児はいまどんなアニメを見ているんでしょうか?というところで統計をみてみます。
2017年6月に実施したNHKの幼児視聴率調査です。
サンプルは東京圏に住む2~6歳児1000人。
テレビの視聴時間は、録画やDVD、そしてyoutubeに取って代わられつつあり、長期的には減少傾向ですが、依然1時間40分という視聴時間を保っています。
そして、NHKの調査だからでしょうか?圧倒的にEテレの割合が高いです(下図)。
まあ、親が無条件で安心できるのがEテレなのかもしれません。
そして、よく見られている番組ですが、プリキュアや戦隊モノがほぼ入っていません・・!意外と賞味期限が短いのがこれらの番組のようです。。
最近では、これらをすっ飛ばしてドラえもんやクレヨンしんちゃんに行ってしまうのかもしれません。
ちなみに、これ書いているときに、6歳児の娘に「何のアニメが好き?」と聞いたら、「英語であそぼ、クックルン、0655、ちびまる子ちゃん、プリキュア、サザエさん、天才てれびくん」等が挙がりました。
親の趣味と、典型的な6歳児の傾向が入り混じっています。
子育て中の方は、上記の図に書かれたテレビ番組の内容はおおよそ把握していることと思います。それぞれの年齢での人気上位はだいたいこんな傾向です。
インターネット動画視聴は急増
さて、本題のネット動画です。
全体平均で47分。それほど多くはありませんが他の視聴に比べ急増しているのと、月齢が低いほど視聴時間が長い、というのが特徴的です。
月齢が上がるにつれて遊びの幅も広がり、ネット動画に頼らずとも長い時間を過ごせる、ということかもしれません。たしかに、小さい頃の方が無駄にテレビを見ていたような気がします。
このレポートではグラフなどはありませんが、モバイル端末での視聴が増加しているようです。スマホ利用に関しては、ほかの統計にもありますが、育児中の親のスマホ所有率は92%*1とあるので、それも納得です。
エルサゲートの排除
まず、虚無動画と区別されるべき、「子どもに見せてはいけない動画」があります。
一見、子供向けに見えて、実は性的な内容や残虐性のある内容を含んでいる、という動画をエルサゲートと呼びます。
悪質なイタズラ目的であったり、人気コンテンツを一部使用し広告収入のみを目的とした明らかな違法動画であったり、と明らかに排除すべきコンテンツの一つです。
これらに対しては、Youtube本体も対策を講じており、国内でも注意を呼び掛けるメディアが増えています。
虚無動画とは?
こういったエルサゲートの動画には、ほとんど遭遇したことはありませんが、それと虚無動画は区別して考えた方がいいでしょう。
虚無動画には、広告収入目的のものはあれど、こういった悪意はありません。
虚無動画をいくつか例示すると、
・食玩やおもちゃ屋のおもちゃを開封し、それについて解説する動画
www.youtube.com/watch?v=-6WpR4Vfps0(※リンクは貼りません)
・よくわからない絵描き歌
www.youtube.com/watch?v=qDXHlz9gGrs
・海外のよくわからない映像(下記リンク参考)
とある幼児が好む”虚無Tube”の実例 - 光景ワレズANNEX
などがあります。
もともとのネジ子さんのブログにもありますが、
YouTuberがアップしている動画において、音楽はフリー素材のものか、「それ著作権とか大丈夫なやつ……?」と心配になるようなやつで、無闇につけられた効果音はひたすらうるさく、画面に登場する人物は衣装が工夫されているわけでもなく、発声の仕方もめちゃくちゃで、そもそも幼児が好んでみる動画には同じ年頃の子供が出ていることが多く、幼児の奇声が聞こえてくることも多い。なんでわざわざ他人の子供が奇声を発する様子を動画で見せられなければならないのか?とかく、視覚的に美しくなく、聴覚的にも聴きやすさがなく、内容も面白くない、というコンテンツが延々再生されているのである。つらい。
という感想がまさに当てはまるような動画です。
youtuberの動画は、良し悪しはあれど多少見栄えを整えたり、楽しさが伝わるような工夫をしたり、それなりに音響もこだわったりと、素人なりに動画を作り込み、その面白さを伝えています。
ウェブの世界では広告収入だけを目的としたゴミみたいなサイトのことを「スパムサイト」と呼ばれますが、それの動画版だと言って差し支えないでしょう。
アフィリエイトサイトに敏感な方はそうしたサイトの特徴をよくご存じでしょう。まさに中身のない、ただ幼児の好みそうなものが配置されているだけのワードサラダのような動画が虚無動画とよばれるものです。
虚無動画の選別と排除の是非
さて、これらの虚無動画に対し、私たちはどのように接すればよいでしょうか?
以下は個人の見解です。
私は、遠慮なく選別と排除を行います。
子どもがそれを見ていることに対し親自身がストレスを感じ、日常のコミュニケーションに齟齬をきたす可能性があるから、です。
残念ながら、親の意識の程度にかかわらず、子育ては選別と排除の連続になります。
与えるおもちゃ、見せるテレビ、ゲーム、ときには付き合う人まで、親は直接あるいは間接的に選んだり、選ばせたりします。たとえそういう自覚が親になくても、です。
もちろん選別と排除があったとしても、子どもはいつか排除したものにたどり着くでしょうし、そうしたときに親子間のルールを反故にしたり、目を盗んだりすることもあると思います。
それも自然な子どもの成長だと思います。
ただでさえ、育児においてはいろいろなストレスに晒されるのに、たかが虚無動画のためにイライラしながら、見せることもありません。もっと面白い(と親が思う)動画はいっぱいあり、それらは十分に子どもも楽しめるからです。
虚無動画という選択肢を取らなくても、HuluでもNetflixでもAmazonビデオでも、良質なコンテンツを低額で自由に見せられるものがいっぱいあります。
その他、一般的な解としては、子どもたちのインターネット利用を考える会の発行する「未就学児の情報機器利用 保護者向けセルフチェックリスト(3歳から6歳)」などを参考にするとよいと思います。
なんだかPTAの会報みたいな作りですが、そのほうが安心感あるのかもしれません。
自分の知識に自信が無かったり、判断に迷うことがあれば、参考になると思います。
より子どもが大きくなったら、動画コンテンツの広告収入の仕組みや、それを悪用したサイトや動画などについても説明すればよいと思います。そうした共通認識があったうえで、子どもが自分の好きなものを見ることは、私は制限しないつもりです。
いまは、簡単に自分で動画編集もアプリでできるので、実際に自分たちで動画を作ったり編集したりするのもいい学習になると思います。動画作成の難しさや伝え方、意外と質の高いものが作れるということが分かると思います。
Youtubeに関しては、今の子どもたちの世代にとっては避けて通れないものであり、学校内でも話題の一つに上るものだと思います。
ただ、基本的にはYoutubeもTwitterなどと同様にSNSであり、SNS上には悪意を持った他者や、話を聞かない・文脈を理解できない他者もいっぱいいるし、何かを発信すればろくでもないクソリプも送られてくる、ということは子どもと共有し、そのためにブロックという機能があるのだと教えていかなければならないかと思います。
「断ること」をしないことが、いかに私たちの生産性向上を阻害し、成長を阻害し、ストレスをためるかということは、きっと勝間さんが教えてくれます。
*1:ベネッセ研究所・2017年 乳幼児の親子のメディア活用調査