京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

東京都保育ニーズ実態調査を読みとく

www.metro.tokyo.jp

そろそろ、また保育園の当落情報で一喜一憂する季節ですね。

東京都の実施した、「東京都保育ニーズ実態調査」(平成29年8月~9月実施)の速報版が出ていましたので、ちょっと覗いてみました。

 

東京都といえば、待機児童対策としてベビーシッター代の補助に関する予算を通したことで、最近話題になりました。

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 都内でシッターを利用する場合、月平均で約三十二万円(一日八時間で二十日間利用)かかるとされる。新制度では、月二十八万円を上限に補助することで、自己負担を月最大四万円程度に抑える。千五百人分の予算を計上し、所得制限は設けない。

 おそらく、その政策の元になっている統計データになるのかと思われます。

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こないだ、玩具博物館で大量に素材を仕入れてきました。


 

共働き世帯は約7割

調査は、0歳~5歳の子どものいる家庭に対し行われ、サンプル数は約38,000件。

まず気になるのは、父母ともに働いている共働き世帯の割合です。

結果を見ると、23区内では母親の32.7%、23区外では37.9%が無職いう結果となり、6~7割が共働き世帯となりました。

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また、母親のほうが就業日数は短い場合が多く、また居住地近辺での勤務が多いという結果になっています。

母親が帰宅時間のピークは17時~18時台、父親の帰宅時間のピークは20時~21時台と、このあたりは肌感覚的にもその通りだなぁ、という感じはします。

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公立認可園の希望と実態のギャップが最も大きい

希望していたサービスと実際に利用しているサービスのギャップを示したのが下のグラフになります。

複数回答可なところが、少し掴みにくいのですが、認可公立園、認可私立園、幼稚園の順に希望順位が高く、東京独自の施策である認証保育園(他の自治体であれば認可外保育園)、認定こども園と続きます。

 

上位のサービスで最もギャップが少ないのが幼稚園です。幼稚園は比較的ニーズが満たされていると考えられます。

ベビーシッターは希望者の母数が少ないですが、それは価格の高さからそもそも検討されていないからでしょう。今後、予算案次第で、希望者が殺到する可能性はあります。助成される人数は少なそうなので、ギャップは相当広がりそうですが。

 

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約3割が保育・教育を考慮して転居をする

それだけが理由で引っ越しをする家庭は少ないと思いますが、妊娠・出産前の居住地から保育・教育サービスの良さを考慮して引っ越してきた家庭は約3割という結果です。

もっとも、家族が増える、というライフイベントは、引越しやマンション購入を考える絶好のタイミングでもあるので、子どものことも考えるのは当然のことかもしれません。祖父母などとの同居がなく引っ越す余裕さえあれば引っ越したい、という人も多いのではないかと思われます。

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 認証保育園と認可保育園の価格差は2万~3万

東京は、高所得者でも認可保育園の保育料は比較的安いようです。認証保育園や小規模保育所が割高です。認可園に落ちたら、倍近い価格を払うことになる、というのはなんとも辛い話です。月に2万~3万円あればもう一部屋ある広いマンションも借りれそうです。

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保育料の適正価格は?

4万円。「家の近くに施設もスタッフも十分な認可保育園があるとき、いくらならその保育園に入りたいですか?」という回答に対し、最も多かった答えです。

また、0歳児が最も高い価格で、年齢が上がるにつれて、利用したいと思う価格は徐々に下がるという結果です。

現状の利用者の認可公立園の平均値が28,000円ですので、現行料金は割安感がある、と言えます。

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また、こちらのデータと就学前児童の人口推計をもとに、価格変動後の保育ニーズ・待機児童数のシミュレーションも行っています。

現行の保育料よりも1万円高くなれば、平成32年にはニーズとのギャップが5.1万人、2万円高くなればマイナスに転じる、としています。

もちろん、価格によって保育園をあきらめる場合、女性が就業をしない選択を取ることが考えられるので、こうした施策は単純には取らないだろうと思われます。

またベビーシッター代補助金の上限設定が自己負担4万円程度としているのは、このあたりのニーズに沿ったものでしょう。

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 待機児童対策は?

結局のところ、待機児童対策はどうするのでしょう?というところは速報版からはあまり読みよることはできません。

人口推計によれば、現行の制度のままでは、平成32年の待機児童数は14万人です。ベビーシッター代の補助は1500人程度ということですので、焼石に水といった状況です。

東京都は、下記のような取り組みを行い7万人分の保育枠の確保をする、とHPに掲載していますが、具体的な数値の根拠は分かりません。

 

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現在、都内の実数上の待機児童数は、8500人程度とされていますが、潜在ニーズを含めれば、10万人単位での不足、という推計になるものの、上記の施策を行ったうえでもなお不足といった状況です。

であれば、今後保育料の値上げがされる、といったことも十分に考えられそうです。

 

一方で、国の施策では、保育料無償化の動きが進んでいます。主な対象は3~5歳になりそうですが、負担割合の設定次第では、保育ニーズがさらに増大する可能性もあり、「誰が保育料を負担するのか」というのが待機児童の根本問題になりそうです。

いうまでもなく、利用者の負担が無くなり、その分が税金で賄われれば、受益者以外の負担が増え、実質的な独身税になります。

www.nikkei.com

個人的には保育無償化は、高所得者層が得をするだけの施策であって、低所得者層はもともと負担感が少ないのではというのが、この実態調査からも読み取れるものなので、反対です。

幼児教育の重要性は認識しつつも、小学生になればほぼ全員が読み書きそろばん程度はできる日本において、さらなる応用力が身につく幼児教育を今の給与水準の保育士に求めるのは酷なように思います。無償化するカネがあるなら、保育士の専門性と質の向上に使ってほしいです。

 

今住んでいる地域と、東京はまた全然異なる保育事情があるなぁ、と細かな点は気になりつつ、とても参考になる資料でした。

うちの子は、もうすぐ卒園です。