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地域と子育て-京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

自治会、町内会の問題は「強制」にあるの?

先日、こんな記事が話題になりました。

PTAを上回る強制力?「町内会」のナゾ

ここにも善意による強制が!

toyokeizai.net

ほぼ町内会=自治会ですので、少し気になるところがあったので、今回はこの記事について取り上げます。

 

ちなみに、僕はこの記事に関しては少し否定的な立場を取ります。

本記事の著者の大塚玲子さんは、PTAの問題を丁寧に調べ上げ、著書も出されており、その分野においては素晴らしいライターさんですが、その延長線上で今回この「自治会、町内会」に関する記事を書かれている、というのが前提になります。(記事では町内会と表記していますが、ここでは自治会として進めます)

 

さて、「本当に自治会は強制力の強い組織なのか?」「自治会の仕事は負担が大きいのか?」「自治会の何が問題なのか?」

そういったところを検討していきます。

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(僕の属する自治会で行われた筍掘り。2015.4)

 

 本当に自治会は強制力の強い組織なのか?

「町内会」の仕事内容は、会によってまちまちです。夜間の町内パトロールや清掃活動、草取り等をしているところもあれば、お祭りなどのイベントや、資源回収のような活動をするところもあります。あまり知られていませんが、「街灯の管理や設置」という仕事も自治会が担っている場合が少なくありません。

僕の所属する自治会の仕事も、上記のものとほとんど同じです。

会員どうしの情報共有は、回覧板はなく、毎月発行の自治会広報、その他適宜お知らせを配布したり、掲示板に掲載する、などといったものになります。

もちろんPTA同様、任意加入が前提の団体ですが(強制加入にできる法的根拠はない)、昔からの慣習で「その地域に住む人は全員加入するもの」として扱われてきました。しかし昨今では加入をやめたり断ったりする世帯も増えており、全国的に加入率が低下しています。 

 確かに、全国的に加入率は低下しています。先日、自治会連合の会議に参加したところ、市内の自治会加入率を示す資料をもらいました。

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これを見ると、この市内全体の自治会加入率は約50%であることが分かります。また、同じ市内でも加入率の高い地域と低い地域でかなり差があることも分かります。

PTAの加入率がどの程度か、手もとに資料はありませんが、50%の加入率がPTAを上回る強制力があるものとは必ずしも言えなさそうです。

 

「自治会の仕事は負担が大きいのか?」

紙屋高雪さんの自治会長の話が記事中は続きます。

“形だけ”ならと思い……。でもやってみたら、やはりちっとも形だけではなかった(笑)。

同じく、僕も自治会長を引き継ぐとき、会長の仕事、いろいろあるけど、まぁなんとかなるよ~、という感じで引き継がれました。

 

ここで自治会の仕事を少し整理すると、自治会の仕事は主に、自治会の「内部向けの仕事」、「外部向けの仕事」の二つに大分できます。

<内部の仕事>

・防犯パトロール・防災訓練

・ゴミの分別

・住民トラブルの解決

・自治会費の管理・会計

赤十字福祉協力金などの回収

・夏祭りなどの住民イベント

・広報誌の作成

(※ウチは管理組合は別に構成されているため営繕等のハード面の仕事は含まれません)

<外部の仕事>

・自治会連合への参加

・周辺自治会との連絡・連携

・青少年対策委員会

・地域のお祭りの実行委員

・市主催のお祭りの実行委員

福祉委員会

・市民体育祭、文化祭などの運営委員・・・等

 

他の市について、詳しく調べてはいないのですが、ウチの市では、自治会連合協会>地区連合自治会>単一自治会という構成となっており、地区連合が、小学校などの校区とほぼイコールになっています。(厳密には、ズレるところがあり、それも問題の一つになっています)

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さて、記事中の紙谷さんのお話。

いちばん負荷が大きかったのが、近隣の自治会の集まりである「●●小学校区自治団体協議会」(以下、略して「校区」)との関係でした。各自治会長のほか、防犯、防災、交通安全、男女共同参画社会福祉協議会、青少年健全育成委員会など地域の各種団体代表が集まる会なんですが、必要とは思えない仕事がたくさんあるんです。 

 これ、僕も引き継いでから知りました。自治会長の変更届を市に提出したあと、次々に市からの封筒が届き、「僕、いつの間にか委員だったんだ??」ってことが続きます。「引き継ぎの時、言えよw」って感じですね。

 

で、実際に参加してみると、自治会の長のほか、PTAや学校の先生、市職員、市議なども集まる会もあります。だいたい平日の夜19時30分~といった仕事終わりの時間です。皆様、本当にご苦労様です。

 

そのなかで、「必要とは思えない仕事」は確かにあります。

僕は(というか妻も含め僕らは)、若いってことを盾にして、遠慮なくずけずけと「この予算要るの?」と質問したり、やる意味を聞いたりしました。でも、大体の会議は、市から降りてきた議題や連絡事項をこなすもので、予算についてもかなりアバウトです。結局、追及してもなかなか簡単に改善されなさそうでした。

 

実際に、これらの会議で何をやるのかといわれれば、「青対」であれば、防犯パトロール、不審者情報の共有、夏休みの注意等の確認、「福祉」であれば、敬老会の開催について、などです。

 

どの会議もひと月に1回くらいはあるので、会長が全部参加すると、ひと月に7,8回くらいかな?

やっぱり大変でしょうか??

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全部一人でやるわけじゃない

マジメにこんなんやってたら大変です。仕事しながら、子育てしながら、全部行くはずがない(笑)。そう、全部マジメにやらなくていいんです。

必要ないな、と思ったものは遠慮なく行きません。

もし不都合があれば、あとで必要なことだけ電話で教えてくれます。

 

また、自治会のほかの役員に行ってもらうことも多いです。特に、防犯・体育・環境あたりの会議は、ほぼ任せっきりです。

こちらも、会長判断が必要なものだけ、連絡をもらいます。

結局僕が出ているのは、たぶん半分以下です。 

 

自治会長をしている人は、30代はほとんどいません、多くは引退した60代~80代の高齢者、または子育てを終えた主婦等です。当然、体調を崩すこともあれば、都合が付かないこともあり欠席するのも珍しくありません。

 

自分で主催する内向きの定例会議も、なるべく1時間以内に終わるようにしています。夏祭りの役決めなんかも、話し合いしてても時間がかかるだけなので、全てこちらで指定して、無理な場合だけ変更するなど、とにかく手数を減らしています。

 

「自治会の何が問題なのか?」

本当に問題なのは、「強制加入による負担の押しつけ」なのでしょうか?

 

これまで見てきたように自治会の加入率は50%、当然こうした状況下では、大地震などの災害が起こったときに、生存者確認や避難誘導を加入者以外の住人含め把握することは不可能です。

特に足を悪くした高齢者、寝たきりで介助が必要な方、そういった方の情報こそ、重要になるのですが、そういう方々が「自分はもう動けないし、イベントにも参加できない、役にも就けない、メリットもないし、貢献もできない」といって自治会から抜ける現象が起きています。

市のほうも、それを認識していて、自治会とは別個でこうした独居老人・要介護者の調査・把握に努めていますが、「自治会から漏れた人」ほど、災害弱者になりがちです。

ある程度に顔見知りになることは、罹災時には重要ですが、完全には機能しない、というのが今の自治会の欠点です。

 

自治会の仕事も年々少なくなっています。自治会の高齢化に伴い、地域のお祭りを縮小したところもあれば、他の自治会との合同開催にしたところもあります。もちろん、祭り自体を取りやめたところもあるでしょう。

僕の自治会では、ある時点で、自治会と管理組合の職掌を明確に分けたそうです。そして、ソフト面は自治会、ハード面は管理組合が請け負う形で、自治会は任意、管理組合は強制、という棲み分けを行いました。ハード面の営繕は住んでいる以上、必ず負担すべきものだからです。そして、営繕に関しては、業者にアウトソースしています。

効率化・縮小化の動きはこれまでもその時々の必要性にかられ、これまでも行われてきたことです。

 

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そのほか、深刻な問題としては任意加入であること、住民の高齢化にともない、担い手不足が起きています。

仮に仕事を「本当に必要なこと」だけに絞ったとしても、その必要なことはやはり善意で仕事を請け負う組織が行っています。そして、その多くは働き盛りの男性のいない、高齢者と主婦の集まりで成り立っています。

僕は、社会学者の水無田気流さんが『「居場所」のない男、「時間」がない女』で主張するように、地域の「男性不在」が本当の問題なのではないか、と感じています。

その結果、生じている無駄や無理が多いのではないでしょうか。

いまも回覧板を使うしかないのは、PCの操作ができない人が主体になってやっているからです。新興住宅地の自治会を立ち上げた知人は、サイボウズLiveを使って共有しているようです。

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もちろん、どんなに効率化しても面倒な仕事は残り、仕事も子育てもしている世帯にとっては、負担に感じるものです。

一方で、地域の治安をこれまで維持し、お互いに顔を知ることで安心な暮らしを守ってきたのも、また自治会です。

 

僕は、たまたま転勤してきて、3年ほどしか住んでいないこの地域で、自治会長をしています。

これまでこの地域がどんなふうだったのか、分からないままに始めたけれど、これまでここがいかに大切にされてきた地域か、住んでみて身に染みて実感しています。

守り継がれてきたものは大切にしたいし、強制や負担を感じても、それを上回るメリットを享受できるようにしたい。そんなふうにして、この地域の価値を高めていきたい、と思っています。

 

ということで、いかに男性を「地域」のなかに引っ張りこんでくるか、という課題が新たに生まれました。

この点について、また掘り下げていきたいと思います。

“町内会”は義務ですか? ~コミュニティーと自由の実践~ (小学館新書)