京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

『みえるとかみえないとか』で見える世界

みえるとかみえないとか

タイトルの絵本を買いました。

みえるとか  みえないとか

みえるとか みえないとか

 

ヨシタケシンスケさんは、ユーモア溢れるデザインや絵と、独特の視点で世界を切り取り絵本に意味を与える作風で、大人にも子どもにも受けがいい絵本作家です。

これまでも、「死」という重いテーマながら死んだあとの世界に楽しく思いをはせる『このあとどうしちゃおう』など、一見難しく子どもに説明しにくいものごとを、分かりやすく面白く描く作品を作り続けています。

このあと どうしちゃおう

このあと どうしちゃおう

 

 『みえるとかみえないとか』は、「目の見えない人」がテーマとなっています。共著である伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本が元になっています。 

伊藤亜紗さんは、もともと生物学専攻の学生でしたが、その後美学へと興味が転向します。生物が何を見ているのか、どのように世界を見ているのか、という「視点」への問いがそのまま美学への興味に変化します。美学は人が対象物を「美しい」と捉えるまなざしそのものが大きく問われる学問だからです。

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
 

そして、その興味は、目の見えない人が世界をどう「見て」いるのか、というところにたどり着きます。福祉的なアプローチではなく、単純にその面白さ、身体のふしぎに迫るというアプローチをすることで、そこにポジティブな意味もネガティブな意味も込めない世界を見せてくれます。

そのため、伊藤亜紗さんの書いた本は、純粋に面白いです。伊藤さん自身がとても楽しそうにその世界を探求していく様子が伝わってくるし、読者もまたその世界に不思議と取り込まれていきます。

いま伊藤さんの次の興味は「喋ること」に移っています。医学書院のケアをひらくシリーズから出ている『どもる体』では、「吃音(どもること)」についてひたすら語っています。 これまた非常に面白い本です。

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

 

 

 

話を絵本に戻します。

この本は「見えない人」がテーマになっています。けれど、上述のような伊藤亜紗さんの純粋に「面白がる」視点で話が進みます。教訓めいたものはほとんどなく、ただ「そっち」はそうなってるんだ、いろんな人がいて当たり前だよね、という以上のものを描いていません。

それはこれまでのヨシタケさんの作風とも重なります。ヨシタケさんの絵本もさまざまなテーマがあるものの、大人が決めた結論ありきではなく、ただ子どもの想像力を膨らませるための素材をたくさん用意して、「面白さ」を演出しています。

だからテーマ自体が「知育」的なものでも、子どもも興味をもってくれるし、大人も後ろめたさなく絵本を渡すことができます。 

「なぜ見えないの?」とか「どうしたら見えるの?」という問いは、「見えること」 が当たり前という前提に立った問いですが、「みえるとかみえないとかってどういうこと?」という問いは、その現象そのものについて興味関心を寄せている問いです。

 

そうした視座に立って世界をみせてくれる非常に面白い絵本です。

 

より詳しい内容については下記の対談やダヴィンチの紹介をご覧ください。

 

『みえるとかみえないとか』発売記念対談① - お知らせ - アリス館

『みえるとかみえないとか』発売記念対談② - お知らせ - アリス館

『みえるとか みえないとか』発売記念対談③ - お知らせ - アリス館

 

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