京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

主夫に対するハラスメントはあるか

電通セクシャルハラスメントの話が盛り上がりましたが、そろそろほとぼりも冷めたころと思い、このタイトルです。

が、結論からいえば主夫としてはあまりハラスメントを受けた経験は少ないです。 

 

それでも、誰でも少なからず経験はあると思います。最初に入った会社では、ずいぶんなハラスメントを受けた記憶があります。

電通関連の記事を読む限り、某氏が受けたものは、あまりにもひどいハラスメントであるのは間違いありません。 

 

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「主夫」というマイノリティを自称していると、多少なりともハラスメントはあります。それは期待されている性別役割と異なるから叩かれる、という意味ではセクハラだし、家事労働一般を低レベルなものとみなし賃金労働(生産性)至上主義の立場から叩く、という意味ではパワハラに当たるように思います。

 

ハラスメントとは?

言葉の定義をしっかりしておかないと、議論が混乱します。

セクシュアル・ハラスメント、セクハラについては男女雇用機会均等法において、その語の定義や事業主の義務規定が定められています。

職場におけるセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。

職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれます。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf

(※事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)

 

ここでいう、「職場」とは労働者が通常就業している場所以外の場所でも同様で、労働者が業務を行う場所であれば「職場」に含まれます。

職場におけるセクハラは、「対価型」「環境型」に大別されます。

 

対価型とは、「仕事あげる代わりに女紹介しろ」みたいなもので、

環境型とは、「常にエロ本が机の上に出しっぱなしな職場」みたいなものです(意訳)。

 

また、これに加えジェンダーハラスメント」も広義のセクハラ(※注1)とします。

いわゆる「女のくせに」とか「そろそろ結婚しないの?」とか「この童貞が」といった言動です。

 

そのため、性的な嫌がらせ(わいせつ行為やそれに準じるもの)に限らず、性別を理由とした相手を不快にさせる行為一般は、程度の差はあれど、すべてセクハラと定義します。

 

さらに詳しくは下記のリーフレットをどうぞ。

企業における人権研修シリーズ『セクシュアル・ハラスメント』

http://www.moj.go.jp/jinkennet/asahikawa/sekuhara.pdf

 

また、パワーハラスメントパワハラについても厚労省の定義があるので、見てみます。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

(引用:職場のパワーハラスメントについて |厚生労働省

です。

さらに、下記のものを典型例として掲げています。

1)身体的な攻撃

暴行・傷害

2)精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

セクハラとパワハラでは、 やや定義や成り立ちの背景が異なりますが、いずれにしても、「過度に立場の優位性を利用した、あるいは性的な言動、性別役割意識に依拠した言動により、不当な扱いを受けたり、不当な環境を強いられたりして、精神的・身体的苦痛を与えられる」ことを広くハラスメントと捉えたいと思います。

 

さて、ようやく本題です。

主夫の私が「主夫」として受けたハラスメントです。

 

「ヒモ」というレッテル

いつからこの言葉があるのか知りませんが、女性に稼いでもらっている男性のことを「ヒモ」と呼ぶ蔑称があります。

家庭内の仕事をメインとしているので、当然一般的にフルタイムで働く男性よりも収入は低くなります。

 「男性は稼いでなんぼ」「奥さんがかわいそう」「毎日何してんの?」

さまざまな角度から「ヒモ」である状態を叩かれます。

「主夫」になる、と腹をくくっている以上、こうしたことは当然言われると思っているし、案外自信をもって主夫だと言ってると言われなかったりするんですが、それでもこうした言動には出くわします。

また、お金の使い方にいろいろ文句を言われます。

「奥さんに養ってもらってるくせに、そんな高いコートを買うな!」

みたいなやつです。

togetter.com

他人の家庭の懐事情に踏み込まないでほしいですね。上記の例はそれをネタにしたムーチョさんも怒られて当然ですが。

 

採用されない

主夫をする男性もお金を稼ぎたい時があります。主婦がパートに出るのと一緒です。

でも仕事をするにあたって、まず、採用の壁にぶつかります。

男性はずっと働いていて当たり前、キャリアが断絶した時点で何かしら怪しい人物である、というステレオタイプのあるなかで、多くの場合採用面接に臨むことになります。

いうまでもなく、圧倒的に不利です。その先入観を払拭させるほどの好感度を印象づけられるか、が主夫の就職活動においては重要になります。

が、もちろんこれも、採用時に性別で採否を判断するセクハラの一種です。正直、色眼鏡で見られている感はヒシヒシと感じました。

 

もっとも、最近はアルバイト情報誌にも「主婦・主夫大歓迎!」といった両性併記のものが多く見られます。アンケートの項目にも「主夫」という選択肢が普通にあります。広告掲載上の規定やユーザビリティの問題なのかもとは思いますが、一応そうした配慮まで至るようにはなったようです。

 

それでも、現実に主夫が応募してきたら先に述べた先入観が強く働くのだと思います。

 

男女問わず、キャリアの断絶はやはり不安要素です。その間に、どんな自己研鑽をしたか、といったことを採用上聞かれるのは全く問題ないと思いますし、自分自身も主夫をしていた経験は、決してマイナスではないと思っています。

だから、訊かれたら堂々と答えたいのですが、こうした場合、訊かれるまでもなく不採用…といった場合が多かったです。

 

居場所がない

いざ採用が決まり、働きに出たもののうまくコミュニティになじめない、あるいは男性パートを受け入れる環境が整っていない、というケースもあります。

私もいまパートで働いていますが、 今の職場でも男性のパート内勤社員は初めてだったそうで、社内的に少し混乱させてしまったこともあります。

例えばロッカールーム。これまでは女性社員しかいなかったので、男性用の部屋がありませんでした。(別に要らないから、いいです、と今に至りますが)

それに限らず、繁忙期の一時的なパート(お歳暮や年末調整、健康診断など補助)といったものは、応募者のほとんどが女性です。そこで仲良くみんなでランチ、というときにやっぱり男性はなかなか誘われません。(今はありがたいことに誘ってくれます)

これまで、男性がいなかった場所に男性が現れることで、その居場所が確立されてない、という問題がこれまたあります。

 

女性専用車両に一人乗っている男性、のようなものです。それでも別に違和感なく受け入れてくれたらそれでいいのですが。。

すごく旧態依然としたある大企業では、昼休みに『休憩室』でお弁当を食べてたら、次の日呼び出され「ここは女性しか使っていないんだから空気読め」と言われて追い出されたこともあります。テレビを見ながら楽しく女性たちが談笑しているなか、節電のため暗い自席で一人お弁当を食べていました。

その会社はやはり居心地悪く、すぐに辞めました。

 

まとめ

思ったより主夫であるときのハラスメントは少ないです。

「ハラスメント」はその性質上、何らかのコミュニティ内で起こるものだからだと思います。

主夫は、一応個人事業主のように働くことができます。地域やパートの仕事など何らかのコミュニティには属しますが、そのコミュニティは互いに深入りすることもあまりありません。

正社員で働く職場であれば、深いつきあいが求められます。そうした働いていた時に受けたパワハラのほうはずっと強烈に今も夢に出てきます

 

下記の記事にもありますが、働きながら子育てをする場合のパタハラも意外とダメージが深いです。

本記事とは少しずれますが、これもまた男性が受けやすいハラスメントの一つかと思います。

www.huffingtonpost.jp

 

これといった解決方法が具体的にあるものではありませんが、「ハラスメントとはなにか」を正しく認識し、具体的な事例を把握したうえでうまく迂回路を探る、といったことをきちんとそれぞれの組織の中で定期的に研修していただければなぁ、と思うところです。

 

 

 

 (注1)

下記の記事によれば、性的でないが、性別に関係する不快な言動は、均等法上はセクシュアルハラスメントとは区別されているものの、”国家公務員のセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する人事院規則10-10においては、性別により差別しようとする意識等に基づく発言(例えば、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」、「女性は職場の花でありさえすればいい」などの発言や、「男の子、女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること)や行動(例えば、女性であるというだけで職場でお茶くみ、掃除、私用等を強要すること)は、セクシュアル・ハラスメントになり得る言動である"とされています。

また"EUでは男女均等待遇改正指令(2006/54/EC)において、セクシュアルハラスメントとともに、セクシュアルな性質ではない、性別に関連する職場のハラスメントについて規定"されています。

このことから、本記事では、ジェンダー・ハラスメントも広義のセクハラと定義します。
www.jil.go.jp