京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

「京大出て専業主婦なんてもったいない」のか?

 京大を出て専業主夫になった私ですが、片手間に書きます。

news.careerconnection.jp

先日、キャッチ―なタイトルで注目を集め、その後茶化したことで村の怒りを買い、炎上したブログがありました。
(※6/4追記 現在はブログごと削除されたようです。残念ですね)

 

同じ発音のセリフをよく言われるので、共感するところもあります。 

「もったいない」ってよく言われてきました。主夫になる前から、ずっと。

 

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新卒ではじめに入った会社は、設立8年目の小さな会社でした。

志望動機を問われる意図ではなく、「なんで(京大出たのに)ウチの会社に?」「もったいない」と幾度となく言われました。

 

・就職活動で大学の本来の活動を損なうのが嫌だった

・そのなかで一回の面接で内定出してくれた

・自分の興味のある分野(医療・労働・福祉)

・希望の勤務地と職種で働ける(東京・事務)

・同期も先輩もいい人いっぱい

・給料もそれなり(借上社宅含めて、500万位?)

って、自分にとってはとてもいい会社だったんだけど、いちいち説明するのも面倒で「まぁ不思議ですよねー」って。

 

その次に転職した会社でも、同じことを言われました。

その会社で、体を壊して、専業主夫になったのですが。

主夫になってからはあんまり言われない

ケース1 地元の友達

主夫になってから、中学の同窓会があり、地元の友達に会ったのですが、「今何してんの?」「主夫。」と返したところで、

「えー、私と一緒じゃん!大変じゃない?!」「働けw」みたいな声が多くて、「もったいない」なんてあまり言われませんでした。

田舎には、高校卒業してすぐに専業主婦になった子も多く、いろいろ主婦の話を聞いて盛り上がりました。

大学受験を経験していないと、京大って名前は知っててもどのくらいすごいのか分からない。もったいないかどうかも判断つかない。自分も当時、過去問見るまでこんな難しいなんて知らなかったし。

頭のいい子もやんちゃな子も皆すっかり落ち着いて主婦。昔よりずっとフラットに話せて居心地が良かったです。

 

ケース2 大学の友達

大学の友達なので当然ほとんどが京大卒なんですが、変な人が多いので主夫してる自分はまだ普通なほうだと思っています。

まだ学生してる人も多いし、パートナーの稼ぎを頼りに研究してる人もいる。卒業後の進路がみんな多様すぎて、「主夫や主婦・家事見習い(無職)」なんてその中の一つに過ぎない、という共通認識ができている気がします。

地頭がいい人も多く、「夫婦でうまくやってるならいいよね」で終この話題はさらっと終わり、そのあとは別の話題に移っていく、という感じで、とりわけフォーカスされることが無いです。

ケース3 自分の親

たぶん、これが一番言われるんじゃないかと思います。

そりゃそうだ。目いっぱい塾代やらつぎ込んで、学生時代も仕送りして卒業させたのに、主夫してるなんて、(私のお金が)もったいない。

せっかくいい大学にやったのに、いい会社に行かず挙句の果てに主夫とは(いい会社に行けるチャンスを逃して?)もったいない。

そんな直接的には言いませんが、上記の気持ちをにじませつつ、私の奥さんに申し訳ない申し訳ない、と思っているようです。

死ぬよりマシだと思ってくれるしかないです。ごめんなさい。

 

ケース4 その他の人

仲のいい人ほど、「もったいない」なんてことは言いません。事情も知ってるし、いい加減な自分の性格もよく知ってくれているので。

おそらく属性でしか私を知らない人、それほど親しくない人から、よく言われるのかな、と思っています。そういう場合もあまり直接は言われず、こんな風に言ってたよ、ていうのを後で聞いたり見たりするのですが。

主夫になる前のほうが、よく言われてきたのは、関係性が希薄な(肩書や属性で判断しがちな)ビジネスの場でのことだったからだと思います。

 

「常識に囚われない私」の美化

「もったいない」って言われると、たしかに「余計なお世話だよ」と嫌な気分になると同時に、「そんな常識に囚われない私」をどこかで誇らしく思う気持ちにもなります。

 

京大特有の性質なのかもしれませんが、想像の斜め上を行くことが好き、という珍しもの好きの雰囲気があります。そのため「京大を出て専業主婦」というのもまた、一種のステータスなのです。

 

炎上した件のブログも、これだけ多くの人が自分のブログに言及することを「面白い」と感じているようで、それは「常識に囚われない私」に満足し、悦に浸っているだけではないかと思います。

自分にもこういう気持ちが無いといえば、たぶん嘘になります。だから「京大卒の主夫」とわざわざ書いているわけで。

先のブログであふれていた承認欲求の正体は、この辺りだと思っています。

 

 「もったいない」とは思わない

個人的には、専業主婦や専業主夫がもったいないとは全く思いません。

 

教育投資が~という意見もありますが、専業主夫してても、社会に関わり貢献する機会は山ほどありますし、むしろもっと多くの人に会社だけでなく、地域・家庭というところに関わってほしいと思っています。

(※このブログもそういう意図で作っています)

 

大学時代の専門性も、理系学部はまだしも文系学部は殆どの人がそれを活かせずに、営業や経理、人事といった事務仕事に就いているのでは、と思います。

文学部で学んだことは、実社会では全く役に立ちませんでしたが、私の人生をより豊かにし、多くの人との良好な関係を築かせてくれたと思っています。

 

京大卒、という学歴も聞こえはいいですが、人より少し記憶力と要領が良かっただけ、で、コミュ力が高いわけでもないし、手先が器用なわけでもなく、仕事の能力は全く別のものです。

もちろん、記憶力と要領の良さで、一定以上の仕事はできますし、学歴偏重な社会を利用するに越したことはないのですが。 

もし、問題があるとすれば、専業主婦・主夫をしている期間が、キャリアの断絶と見做されてしまい、会社に戻りにくいことかと思います。その行き来が自由になれば、もっと夫婦間で攻守交替がしやすいのになぁ、と思うばかりです。

 

「専業主婦なんてもったいない」なんて、言われてても気にしないでいればいい、というのはその通りなんですが、そんなブログに煽られても気にしないでいればいいと思います。

 

一方、その後の専業主婦さんのブログをみると(その後数日は続けていました)、ご本人もずいぶんと煽り煽られることに苦悩を感じていたのではないかと思われます。

 

お互いに気にしないで生きるのが、一番いいですね。

 

 

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