京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

#メルカリ読書法 と最近の古本動向

twitterで、「メルカリ読書法」なるものが紹介されていました。

1.本を買う

2.買ったタイミングでメルカリに出品

3.売れるまでに強引に読み切る

積読をなくし、短期間で本のエッセンスを吸収できる。

 

とのことです。

 

私がよくやってるやつですね。

lazyplanet.hateblo.jp

最近の動向

アップデートできる情報としては、最近同じようなことをやってる人が増えてきたことですね。

惜しげなく新刊を出す人が増えてきたのでメルカリで買って、またメルカリで売ることも多くなりました。

メルカリにはフォロー機能がついているので、定期的に新刊を出している人はフォローしています。私もよくフォローされます。

私はわりと値下げに応じるほうなんですが、相手が良い本出してたら「この本買うからこれくらいの値下げでどうでしょう?」みたいなこともしています。

出す本も、なるべくぜひ読んでほしいと思う本だけを出しています。「この人の出品する本なら面白いだろうな」と思ってくれたら嬉しいです。

フォロー・フォロワーという関係が、今後も続くようないい取引を心がけたいと思っています。

フリマならではの感覚で面白いですね。

 

古書店が生き残るには?

ただ実際、古書店にとっては脅威です。天牛堺書店の倒産ニュースがありました。

headlines.yahoo.co.jp

古書店が生き残るにはどうしたらいいでしょうか?

 

大阪には名前が紛らわしいけれど、『天牛書店』という古書店があります。私は毎週のように通っているのですが、専門書が多く、昔ながらの古書店らしく絶版本や希少本も多いので、何度通っても面白いです。

www.tengyu-syoten.co.jp

 

『ValueBooks』はネット古書店ですが、対応も丁寧だしサイトもやってることもユニークで地元に根差そうと頑張っているところもあって、好感が持てます。

corporate.valuebooks.jp

くらもと古本市 | 株式会社バリューブックス

 

大阪の文の里駅近くにある『居留守文庫』では、商店街の空き店舗を利用して、『みつばち古書部』という、複数人の店主が共同で営む古本屋を運営しています。一人一人の店主が、みつばちのように古書を持ち寄って本を売るさまから、この名がついたようです。参加者は65組と多く、互いの本も購入可能なので、それだけでも小さなエコシステムが成り立ってますね。

www.irusubunko.com

 

ブックオフ』もまだ頑張ってますね。昼間にいくとサボっている営業マンの憩いの場になっています。

古本屋好きのクセというかあるあるだと思うのですが、ブックオフなどを定期巡回して好みの本を見つけ出しては買っています。これを私は「救出」と呼んでいます。

ブックオフにはよくバーコードセドラーがいますが、そういう人には買ってほしくないからです。ここの並びにこの本があるより、私の出品している棚に出したほうがきっといい人に読まれる(気がする)と思っています。そして、ブックオフなどの量販店ではガンガン本は捨てられていくのです。そんな本を、なんとか救いたい。

 

メルカリでの取引が楽なので、最近は自分でやりたい気持ちは薄れましたが、やっぱり古書店の独特の雰囲気は好きです。

セレクトショップ的な古書店が増えるのは大歓迎です。そうした古書店では、古書・新品問わず、一般に流通しづらい小出版社の本が出回りやすいので、たくさんある分にはとてもありがたいのです。

以下、大阪のオススメ古本屋です。

FOLK old book store 古本・新本・個人出版本・グッズの販売

books used and new,flower works : blackbird books ブラックバードブックス

LVDB BOOKS

一色文庫 ホームページ 古本買取 古書 上本町 東高津町 - isshikibunko ページ!

葉ね文庫 | 大阪の古本屋(歌集・サブカル・小説)

シカク/シカク出版総合ページ

ひなたブック - ホーム | Facebook(めっちゃ品ぞろえ良いのになんでHP無いん・・)

とほん (@tohontohon) | Twitter(HP更新中?奈良だけど、いい本屋です)

長谷川書店 (@hasegawabooks) | Twitter(新刊書店だけど、いい本屋です)

 

頑張ってる本屋さんは応援したいので、メルカリの売上金はなるべく新刊本に使いたいです。そして自分の家の本棚にただ眠らせるよりは、巡り巡ってたくさんの人に読まれれば、本も幸せなんじゃないかなぁと思って、今日もせっせと出品します。

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『note』を毎日更新してみて気づいたこと

最近、noteを毎日更新する、ということを試みています。

note.mu

それなりに使ってみたり、誰かのマガジンを買ってみたりして、いくつか気づいたことを書きたいと思います。

深津さんのカイゼンすごい

note、2014年のリリース時にちょっと使ってましたが、使い道がなくほぼ放置していました。ユーザー人口が増え始めたのは、2017年に(深津 貴之 / THE GUILD (@fladdict) | Twitter)さんがジョインしてガンガンUI周りをカイゼンし始めてからだと思います。

みるみるうちに、ユーザーは増えるし、機能は増えるし、とても使いやすいサービスに生まれ変わりました。

具体的には、SEO回りがすごくよくなったこと、twitter等のSNSとの親和性が高まったこと、でユーザーの流入数がよくなりました。

お気に入りボタンの☆が「スキ」というハートマークに変わり、ボタンを押しやすくプップアップでコメントが出せるなど、コミュニケーションの幅が広がりました。

連続で投稿していると褒められます。たくさん「スキ」がもらえると褒められます。

とにかく褒めまくることで、ユーザーの投稿=コンテンツ量を増やしています。それにより、どんどんユーザーが集まる、といういい循環が生まれています。

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短期間で成果が出やすい

たまたまかもしれませんが、今年の1月3日くらいから初めて20日程度で、PVが6000ほど。単純にnoteのユーザー数が多いのもあると思います。

編集部ピックアップに掲載された記事が飛びぬけてますが、それ以外の記事も意外と読まれています。Analyticsが付けれないので(たぶん?)詳しい解析はできていませんが、その理由の一つが「マガジン」という機能にあります。

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noteではInstagramと同じようにハッシュタグをつけて投稿します。

そのハッシュタグからの流入もありますが、自分の記事が誰かのつくったマガジンに登録されると、そのマガジンをフォローしている読者にも読まれるようになります。この場合のマガジンの使い方は「お気に入り」や「ブックマーク」に近い使い方です。

 

要は自分のお気に入りの記事だけを集めたnoteを作れる、という感じです。私も、ためしに「また読みたいnote。」というマガジンを作ってみました。実際、いちいち遡ったりしなくても読めるので、備忘録としても便利ですね。

 

ハッシュタグ次第で、有名なnoteの書き手のマガジンに登録してもらえる=PVが伸びる、というところがハッシュタグとマガジンの有効な使い方かと思います。まあ広告も無いしPVは気にしてないのですが、どうせ書くなら読まれてなんぼな気もしますし。

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プロの有料マガジンはすごい

noteというと、「記事を有料で販売できる」というイメージが強いと思います。実際、販売する方法としては、

・記事単体で「この続きを読む」際に課金する

・マガジン化して月額購読させる

・複数記事をマガジンにして販売する

という方法があります。

 

twitterの相互フォローしている人の記事などは、気まぐれに買ったことはあったのですが、先日、(塩谷 舞(milieu編集長)(@ciotan)さん | Twitter)さんの有料マガジンを2018円で購入してみました。

さすがnoteだけでほぼ食っていけてるというだけあって、内容が凄まじく濃いものでした。1記事だいたい10000字~20000字のものが12本。一般的な書籍並みですね。

現役で比較的影響力の強い人が書いたこのマガジンは、下手なマーケティングの教科書を読むよりは、よほど有益な内容でした。彼女が単著を出さずにnoteで有料記事を売っている理由がよく分かります。

定期購読のマガジンはnote運営に20%の手数料が取られ、クレカ決済では5%取られるため、取り分はその分減りますが、下手に出版するよりもずっと短期間で高収益なリターンを得ることができます。

購入する側としても、出版までのタイムラグのある情報よりもずっと新鮮な情報を手に入れることができます。トレンドの速いウェブ業界の内容であれば、なおさら有料記事のほうが有益かと思います。

 

もちろん1記事で10000字の文章を書き、飽きさせることなく読ませる技量があってできることであって、ただ単に駄文を書いているだけのnoteを購入したい、と思う人はあまりいないかと思います。

このあたりは結局、その人のこれまでのキャリアやバックボーンがあって、結局そこに価値を見出している、というところなんだと思います。

私も特に、記事を有料にするつもりもありません。

なぜ書くのか?

はてなブログでは、一応日々の雑記の体をとりながらも、なにかしらの知見を提供できるようにしたいなぁと思っています。なので、統計を調べたり、それなりに根拠を踏まえたうえで書いてはいるのですが、どうでもいい日々のよしなしごともなんとなく綴っておきたいことがあります。

そういうことを、ちょっとナイーブな感じでnoteには綴っています。文体も変えてるし、全然違う印象を受けるのではないかと思います。

あと、noteのユーザー層はなんかキラキラしている人が多いので、ネガティブ成分の多い文章を書いても共感されることが多いです。「はてな」でそういうことを書くと、「またメンヘラか」とか「精神を病んだものの末路はいつも不幸だ」とか遠慮なく手斧を投げつけられますよね。そういう殺伐とした雰囲気も嫌いじゃないですが、noteの優しい感じもなかなかいいものです。

というわけで、そんなふうに使い分けてしばらくやってみようと思います。

専業主夫は続けるのが難しいのか?

専業主夫を続けることの難しさ

さて、宿題を終えたので平常運転します。

定期的にここで紹介している、中野円佳さんの東洋経済の連載ですが、ついに主夫が登場してきました。

toyokeizai.net

記事の冒頭に出てくる和田さんですが、ついこないだプロフィール写真を撮ってほしい、という依頼をうけて撮ってきたついでに、この記事についても話題になりました。

ファザーリングジャパンを通して依頼がきたようです(私も呼んでくれよ)。

PTAの活動に言及しているところで、「ママたちも気を使ってくれて優しいし、パパ一人だとちょっと違う意見を言うのも許されるような側面がある」とありますが、当初はもっと過激な表現(女性だけでは煮詰まる場面を男性的な視点で取り仕切り~みたいな)で書かれていたようで、「近所を歩けなくなるからやめてくれ」と変えてもらったようです。

結果的に、男女関係なく、それぞれの生き方、困りごとを描いた良い記事になっています。

主夫って、働いている相手がいて初めてなることができるものなので、本当にパートナーには感謝しかありません、というのは主夫どうしの会話でたびたび出てきます。

 

私も、専業だった期間は意外と短くて2,3年くらいです。パートになるまでの経緯は、下記に書いていますが、ずっと家の中にいるのもつらい、というのがやっぱり切実なところですね。

lazyplanet.hateblo.jp

 

専業にこだわる必要はない

兼業主夫といっても、扶養内かそうでないかで、また少し立場が違うかもしれません。

でも、扶養内であるうちは、専業にとくにこだわる必要はないですね。扶養の制度はやっぱり制度的にとてもお得ですし、それを享受しつつ月5,6万くらい生活の足しになれば、妻も少し気が楽になるようです。

専業主夫が難しい、というより、いつのまにかなんか働くようになっていた、というのが自然かもしれません。実際パートで働いていても、主夫であるという感覚にはあまり変わりません。子どもが病気になれば休むし、お迎えも行きます。平日は毎日ごはんを作ります。やっぱり主夫は主夫です。

 

それぞれが働く理由は、中野円佳さんがうまくまとめています。

①専業で家事育児を担うことは想像以上に肉体的精神的に大変、②自身の自由な時間がない、③片方の稼ぎでは家計が不安定、といったことだろう。これは、仕事に専念する夫と、専業主婦の妻という組み合わせの家庭が抱える問題と同じだ。

その通りだと思います。

まだ具体的なデータはまだないと思いますが(主夫少なくて)。

 

続くフレーズでは、再就職の難しさを綴っています。

 長年夫婦をしていると、どちらかが働けなくなったり、転勤したり、さまざまな変化がある。また育児や介護のフェーズによって、一時的に「稼ぎ主」の交替が必要なときもあるだろう。ところが、これまでの日本の「サラリーマン」的な働き方では、稼ぎ主を一時期降りて、また戻るということがなかなか難しい

もちろん、一度「稼ぐこと」から降りても、戻れる社会が望ましいし、そういうロールモデルを私自身でも作りたいと思っています。

が、なかなかそうはいかないのが雇用市場です。

中野さんが述べているように、

片方が融通の利く働き方にしようとすれば、何年やっても熟練しても賃金の上がらない「バイト」が中心になってしまう――という日本の状況

があります。

専業主夫・主婦が単に働くだけなら簡単ですが、攻守交代が可能なレベルで「稼ぐ」には、保育園などの子どもの預け先がある、家事サポートの担い手がいる(外注できる)環境がある、それなりの賃金を確保して長期的に働ける、といった条件がそろう必要があります。

 

シーソーカップルになるには?

最近kindleで無料で読める『仕事2.0』でもシーソーカップル、という名前で、攻守交代可能な夫婦関係について述べられています。

仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

 

夫婦がこの形の協力関係を確立すれば、たとえば妻のキャリアが重要な局面に来た時期に、夫が育児に注力し、その次に夫がキャリアで勝負をかけたい時期が到来したときは、妻が家事育児を主に請け負うといったバランスを取ることができ、夫婦ともにキャリアと家庭の両立が可能になる、というのです。

理想的で素晴らしい夫婦関係だと思いますが、難易度が高いです。

雇用市場だけでなく、個人のスキル・能力から考えても、キャリアも家庭も夫婦ともにバランスよく力を発揮できる、というスーパーカップルがどれだけいるだろうか?と悩んでしまいます。夫婦ともに、家事もできるし仕事もできる、ってとってもレベルの高い話です。皆ができることではないと思います。

仕事はプロジェクト単位になっていくとか、一つの会社に依存しないとか、そういう意識高い系あるあるの話が続きますが、「安定」という魅力的なポジションの誘惑に打ち勝って「柔軟性」を選ぶ、というのもまた難しいものです。

まあ、でもだからこそリスクをとって行動する人やなにか新しいことをする人を気軽に応援できる、支える仕組みはたくさんあっていいのかな、と思います。

 

冒頭の主夫の和田さんは、マジックパパとして独立することを考えているようです。

note.mu

こういう挑戦は、心から応援したいです。だから、今回も撮影に協力したし、これからも協力しようと思います。同じ主夫という立場からのいろんなキャリアの成功事例があることは、攻守交代しやすい社会につながると信じています。

 

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2014年~2018年の本ベスト約50冊

#2018年の本ベスト約10冊 というようなタグをつけて、毎年twitterでその年に出版された本の名前を挙げていました。が、まとまってレビューを書いたことが今まで無かったので、2014年~2018年までの約5年間分をまとめてお送りします。

長いので、目次つけておきますね。

 

 

2014年の本ベスト約10冊

『生まれた時からアルデンテ』平野紗季子

生まれた時からアルデンテ

生まれた時からアルデンテ

 

 昨年(2018年)に写真家の奥山由之さんと結婚された平野さん。食べ物への思いが強く、そして真っすぐです。特になにかのレシピを紹介するわけでも、どこかのレストランを紹介するようなものでもないのに、読んでいるとお腹が空いてきてアイスクリームが食べたくなったりします。カフェなんかによく似あう本です。

好きなものについてひたすらに語る人の文章は、いつでも面白いです。

『 あわいの力』安田登

あわいの力 「心の時代」の次を生きる (シリーズ 22世紀を生きる)

あわいの力 「心の時代」の次を生きる (シリーズ 22世紀を生きる)

 

よくよく見ると2013年の本ですね。まあいいか。「あわい」とは”あいだ”とか”境界”のことです。いまでも、そういう曖昧なものに心惹かれることが多いのですが、鬱と診断されたばかりで本格的に気分が沈んでいた当時は、今以上にそういう実世界とは離れた世界のことに思いをはせていたようです。

 

 『境界の町で』岡映里

境界の町で

境界の町で

 

 より分かりやすく「境界」を描いたのがこちら。ここでの「境界の町」とは福島の原発事故20km圏内の楢葉町のことを指しますが、東京と福島を行ったり来たりする作者の”寄り添いたいけど、絶対に寄り添えない”当事者とのあいだにある大きな壁のことも表現しています。ノンフィクションの私小説として、とてもリアルに揺さぶられている作者の心が伝わってきます。

岡さんは、はてなブログもやってますね。少し病んでいたようですが、筋トレで回復したのでしょうか。

 

『カタツムリが食べる音』エリザベス・トーヴァ・ベイリー

カタツムリが食べる音

カタツムリが食べる音

 

 2014年に何度も読み返した本です。病床に臥して動けない著者が、カタツムリのゆっくりと進む時間と同調しながら、自分の時間を取り戻していきます。

私自身は、ちょうど鬱で休職していたころに読んで、現実の世界のあまりにも早いスピードについていけなかった当時の自分の姿がそのまま重なって、泣きそうになりながら『カタツムリが食べる音』を想像しながら読んでいました。

 

 『思考の取引』ジャン・リュック・ナンシー

思考の取引――書物と書店と

思考の取引――書物と書店と

 

書店と書物への偏愛がひたすらにかっこよく語られている、それだけの本です。大げさなタイトルで、難しそうに書いていますが、内容はそれだけです。だから、この本が好きです。良い本は、いい匂いがします。まさに。

 

 『弱いつながり』東浩紀

ゲンロン、大変そうですが無事畳めたんでしょうか。東さんにしては読みやすい本です。要約すると、弱いつながりのほうが強い、ということです。

知ってる世界の知ってるつながりだけじゃないつながりをたくさん見つけようぜ、という提案ですね。安心な僕らは旅に出よう。いいと思います。

 

『親のための新しい音楽の教科書』若尾裕

親のための新しい音楽の教科書

親のための新しい音楽の教科書

 

褒めているレビューより批判のほうが目立つ本だと思います。親のためであって、子どものためではない本です。この本についてはただ一つ「なぜ子どもは大声で歌う必要があるのか」という問いがあるから、評価しています。 

 

 『復興文化論』福嶋亮大

復興文化論 日本的創造の系譜

復興文化論 日本的創造の系譜

 

これもちょっと読みにくい本です。これ震災からの復興とかそういう文脈ではなく、 「国破れて~」の文字通り復興期の文学や文化についての話です。別に村上春樹みたいな淡々としたものだけが現代文学とは思わないし、文学って後ろ暗くってでも熱量のあるのがいいよね、と思います。もっと本を読みたくなる本です。

 

 『反骨の公務員、町をみがく』森まゆみ

反骨の公務員、町をみがく---内子町・岡田文淑の 町並み、村並み保存
 

街並み保存にまつわる話です。美観(伝健)地区って、保存のためには大事なんだけど結構面倒なんですよね。地域の古いものを残すことと、新しいものを作っていくけなくなることとの葛藤のなかで、本当にそこに価値は見いだせるのか、もし維持管理できなくなったらどうするのか。

新しいものが大好きで特に住宅においてはなおさら、という日本の社会のなかで地域の価値を改めて考えたくなる本です。

 

『街場の戦争論内田樹 

街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)

街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)

 

みんな大好き、内田先生です。「なぜこの国は戦争をしたがっているようにみえるのか」という問いに答えている本です。 当時はまだまっとうなことに怒りを向けれていた気がします。今となってはモリカケや統計のウソですよ。

 

『逢沢りく』ほしよりこ

逢沢りく 上 (文春文庫 ほ 22-1)

逢沢りく 上 (文春文庫 ほ 22-1)

 

当時の話題作ですね。ろくでもない毒親から逃げた女の子の話です。大阪いいとこよ。

どうにもならない閉塞感みたいなのが、淡いタッチで描かれているのがいいですね。みんな、もっといろんなものから逃げていい。

 

2015年の本ベスト約10冊

 

『家族の哲学』坂口恭平 

家族の哲学

家族の哲学

 

坂口恭平さんは、巷では変人扱いされるか、すごい人扱いされるか、どちらかだと思います。言動もおかしいし、躁うつ病だし。

でも、なんかこういうふうに自分の病気のことを子どもに伝えるのもいいな、「弱さ」をこんなにもひけらかすことのできる人っていいな、と思います。もっと人は弱くていいし、それを子どもにも伝えたい。

 

『人生最後のご馳走』青山ゆみこ 

緩和ケア病棟における最後の食事を取材した本。最後になにが食べたいかなぁ、私はプリンが食べたいです。高級な手作りぷりんじゃなくて、プッチンプリンです。

とても丁寧な取材で、食べ物からその人の人生観に迫ります。良いです。最後にプッチンプリンを食べる人生は、どんなふうに語られるだろうか。

 

 『断片的なものの社会学』岸政彦

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

社会学、としているけど、なにか社会について述べているわけではない、ただ人々の生活の断片を聞き書きしたものです。でも、その断片的なものをとても丁寧に大切に扱っているから岸さんの本は好きです。社会学が嫌いな人も、ぜひただのエッセイとして読んでほしい。

 

 『かわいい夫』山崎ナオコーラ

かわいい夫

かわいい夫

 

作家の夫、ってどんな人だろうと気になって。私は「かわいい夫」ではないけれど、でもこの本や植本一子さんの本あたりからいろいろな作家が家族本を書き始めたように思います。私自身も、生活を立て直そうといろいろ試みていて、新しい家族の中での立ち位置を探していました。

この年のテーマは『家族』でした。

 

 『べつの言葉で』ジュンパラヒリ

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

 

母語ベンガル語アメリカ育ちで英語を使う著者が、イタリア語で文章を書きます。

新たに「べつの言葉」を学ぶことを著者は「湖を渡る」ことに例えています。周囲の浅いところをぐるっと遠回りするのではなく、自分の力で向こう岸まで泳ぎ切ると。

たしかに周辺だけなら、わりとすぐに覚えられるけど、深いところを泳ぐのには技術がいる。でも深いところのほうがきっと水はきれいで見える景色も違いますね。

 

『本屋になりたい』宇田智子

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

 

私もなりたい、本屋さん。宇田さんはかっこいいです。沖縄の市場で小さな古本屋を営んでいます。そんな人生は歩めそうにないけれど、宇田さんの文章からいつも本屋になった自分を妄想しています。プリマー新書は、中高生向けに書かれた新書なので、読みやすいですね。

 

『レコードと暮らし』田口史人

レコードと暮らし

レコードと暮らし

 

レコードで録音された生活の声、人々の暮らしを綴っています。そうか、音楽以外も録音できるよなぁ、とレコードに明るくない私は目から鱗で面白く読みました。最近レコードプレーヤーが気になっている私です。

 

『ホフマニアーナ』 アンドレイ・タルコフスキー

ホフマニアーナ

ホフマニアーナ

 

タルコフスキーはロシアの映画監督です。ロシアで美的な文化を追求する人はだいたい暗いですよね。ホフマンを題材にしたこの戯曲も、狂っています。それが、でも美しいんです。人の心の醜さと向き合って描き切るのが、文学でもあります。

 

 『服従』ミシェル・ウェルベック

服従 (河出文庫 ウ 6-3)

服従 (河出文庫 ウ 6-3)

 

ウェルベックはSF作家ですが、現実に起こりそうな非現実を描きます。虚構新聞の社主みたいですね。社会の不安をそのままSFにしている巧さは、単純に面白いです。こちらも十分にあり得た未来だと思います。マクロン後のフランスはどうなるでしょうか。

 

『コドモノセカイ』岸本佐知子

コドモノセカイ

コドモノセカイ

 

私は海外文学は割と苦手ですが、岸本佐知子さんのファンです。こちらは子どもを主題とした外国文学を拾い集めたもの。変わったお話が読みたい方向けです。子どもの世界は予想のつかない想像に溢れた世界なので。

 

twitterには書いていないけど、これも追記。

『へろへろ』鹿子裕文

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

 

とにかく面白いです。老人ホームをめぐるドキュメンタリーのような話なんですが、とにかく波乱万丈な展開がすごいです。実話です。それでいて、本当にすばらしい介護施設を作っている。これを読んでから、わたしもなりふり構わず1円でも節約して1円でも稼ごうと思いました。圧巻の一冊。

 

 2016年の本ベスト約10冊

 

 『かなわない』植本一子

かなわない

かなわない

 

ただ圧倒された本です。自分の家族を描いたエッセイで、こんなにむき出しの感情に出会うとは。彼女の家族の話は、この後も長くずっとジェットコースターのように走りながら続いています。

 

『やがて海へと届く』彩瀬まる 

やがて海へと届く

やがて海へと届く

 

彩瀬まるは、若手?作家の中では一番好きな作家です。外れはほとんどありません。こちらの震災を描いた文学は、昨年話題になった「美しい顔」よりもずっと的を得ています。

 

『死すべき定め』アトゥール・ガワンデ

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

「死」について、考える時間がもっと欲しいと最近思っています。今年は改めて読み直したい本。「死」の瞬間、そのあとのこと、豊かな人生を描くには、どこまで描けばいいんだろう。

 

『このあとどうしちゃおう』ヨシタケシンスケ

このあと どうしちゃおう

このあと どうしちゃおう

 

分かりやすく絵本で「死」を描いたものがこちら。 こんなふうにフランクに考えたい。生きることも、死ぬことも。

 

 こちらでも言及しています。

lazyplanet.hateblo.jp

 

『「その日暮らし」の人類学』小川さやか

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

 

アフリカの小商いのフィールドワークをするのに、自らもアフリカの商人になって10年近く研究している、という、そのストーリーだけで大好きな小川さやかさん。彼らのずる賢さ、生き抜く知恵を肌で感じたままに紹介しています。「その日暮らし」の経済、面白い。もっと都市を飼い慣らそう。

 

 『ヘンリー・ソロー野生の学舎』今福龍太

ヘンリー・ソロー 野生の学舎

ヘンリー・ソロー 野生の学舎

 

今福さん、ぜひソローの訳本を出してください。

ソロー、どの訳も読みづらいなぁと思っていたのに、今福さんのこの本ではとても読みやすい。森の生活、いいなぁ。

(※だんだんレビューが雑になってる)

 

『村に火をつけ、白痴になれ』栗原康 

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

 

栗原さんはちょっと危険な人物だと思っています。伊藤野枝についてこんなに熱く語っているのだから。 熱すぎてちょっとついていけないけれど、この語りは面白いです。アナーキズムにはならないでください。

 

移動図書館ひまわり号』前川恒雄

移動図書館ひまわり号

移動図書館ひまわり号

 

移動図書館って面白いですね。うちの団地にも今も来ます。これから、また流行ってもいいんじゃないかな、と思う。本を必要としている人は、今もまだたくさんいます。この本もまた、紙でしか読むことができません。こういう本が巡り巡ってくるような図書館の在り方を、改めて考えたくなります。

図書館の黎明期を作ってくれた偉人の名著です。

 

コッペパンの本』木村衣有子

コッペパンの本

コッペパンの本

 

コッペパン、おいしいですよね。私も好きです。いろんなパン屋への丁寧な取材、食のエッセイを書かせたら間違いのない木村さん。パン作りに興味はないですが、パンの本って読んでると面白いですね。生活に寄り添った身近なテーマだからこそ、読むほどに味わいがあります。

 

『 一汁一菜でよいという提案』土井善晴

一汁一菜でよいという提案

一汁一菜でよいという提案

 

 いわゆるレシピ本ではないですね。タイトルが全てです。いいじゃないですか、一汁一菜で、という提案です。いいと思います。お味噌汁の具材をたっぷりにするのも、なんか満足感あります。

我が家の食卓を変えた一冊です。

 

2017年の本ベスト約10冊

 そろそろ疲れてきましたね。あと2年です。がんばりましょう。

 

 

『 あるノルウェーの大工の日記』オーレ・トシュテンセン

あるノルウェーの大工の日記

あるノルウェーの大工の日記

 

手触りのいい本です。DIYが好きで、大工仕事にちょっと憧れていたり、山が好きで、自然の遊びがしたいといった方にお勧めです。クラフトマンな日常が描かれているだけで、なんか楽しいです。わたしにとってはそれが、非日常的な体験です。

 

『街と山のあいだ』若菜晃子

街と山のあいだ

街と山のあいだ

 

山に登れないのに、山について書かれた本が好きです。いや、登ろうとしたことはあるし山も好きなんですが。でも、ここに書かれているような”街と山のあいだ” のようなものが好きなのかもしれない、と思う。もっとカジュアルに日常に接続されるような、山の空気感が。街でもカジュアルに登山ウェアを着る人も増えましたよね。

 

『とりとめなく庭が』三角みづ紀

とりとめなく庭が

とりとめなく庭が

 

詩人の書いたエッセイです。だから、というわけではないけれど、とても透明度の高い美しい文章です。言葉の感触を丁寧に感じ取りたい、と思った時にふと読み返します。いい加減な気持ちをしゃんとさせてくれるような、気持ちのいい朝の空気のようです。

 

『退屈をあげる』坂本千明 

退屈をあげる

退屈をあげる

 

猫は文学には欠かせない存在です。だから、こういう新しい物語も大歓迎です。世の中にとらわれず、気まぐれで、よく眠る、猫。猫の苦労も知らないで、と言われそうですが、猫になりたいです。

 

 『それでも それでも それでも』齋藤陽道

それでも それでも それでも

それでも それでも それでも

 

齋藤さんの写真が好きです。彩度の高いギラギラした世界から離れた、ざらざらした手触りのあるホッとする写真を撮る人です。文章ものびやかでいいなぁ、と両方が楽しめるのがこの本です。齋藤さんは、耳が聞こえないのですが、特にそういうことを感じさせないし、むしろ彼の長所として活きているように感じます。2018年にもかかわらず2冊エッセイを出しています。どちらも良書です。

 

 『くちなし』彩瀬まる 

くちなし

くちなし

 

またまた登場、彩瀬さんです。こちらの作品も良いです。ご本人もおそらく川上弘美さんを意識しているんじゃないかと思いますが、川上作品が好きな人は是非、という一冊です。間違いなく、その系譜を継いでいく作家です。幻想的で美しい、そういう作品です。

 

『あなたとわたしのドキュメンタリー』成宮アイコ 

あなたとわたしのドキュメンタリー 死ぬな、終わらせるな、死ぬな

あなたとわたしのドキュメンタリー 死ぬな、終わらせるな、死ぬな

 

生きづらさのカタマリみたいな内容の本ですが、それでも死ぬな、というメッセージが強烈です。 いまの自分の発信につながる、勇気を与えてくれた本です。どん底を経験しているから、言葉の強さのなかに優しさがあります。

 

ギリシャ語の時間』ハン・ガン 

ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)

ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)

 

 韓国文学のオクリモノは晶文社から出ているシリーズですが、どれも素晴らしいです。斎藤さんも積極的に翻訳してくれていて、2018年は韓国文学ブームが話題になるほどでした。『ギリシャ語の時間』は、はじめて読む韓国文学としてオススメします。

韓国もどこか日本によく似た国だと思います。経済的には成長しているのに、どこか社会不安に包まれた後ろ暗い感情が埋まっているような。

そういう国のそういう時代の文学は輝いています。

 

『中国が愛を知ったころ』 張愛玲

中国が愛を知ったころ――張愛玲短篇選

中国が愛を知ったころ――張愛玲短篇選

 

こちらは中国のフェミニズム文学です。中国はいつの時代もなんか後ろ暗いせいか、いつの時代も文学は輝いていますね。独特の悲壮感がつきまとう、ねっとりした文章が続く美しい作品です。

 

AM/PMアメリア・グレイ 

AM/PM

AM/PM

 

 小さな章に区切られた、朝と夜が繰り返される、その断片が流れていくような小説です。一つ一つ短いので、電車の移動中にでも。

 

 『子どものための精神医学』滝川一廣

子どものための精神医学

子どものための精神医学

 

子どものための、となっているけれど、精神医学全体の流れも分かりやすく解説しています。そのうえで、子どもの発達心理のことや育児・教育の過程のなかで躓きそうな部分について、丁寧に解説しています。育児本として読んでも優秀ですし、こころの問題を考えるうえでも有用な素晴らしい一冊です。 

 

 『中動態の世界』國分巧一郎

twitterでは書いてないけど。私の周りでは2017年に最も話題になった本かな、と。17年中に読み切れませんでした。が、すごく面白い。能動態・受動態の対比ではなく、「中動態」というのが、古代のギリシアにはあった、と。実は日本にもあった、と。

これをつかって権力構造なんかを説明すると、小難しいヘーゲルとかの理論が鮮やかに分かるんです。その鮮やかさが見事です。

この年流行った「忖度」なんかも似たところがありますよね。能動でも受動でもないけれど、権力に先回りして行動してしまうような。

 

2018年の本ベスト約10冊

ようやく最後の10冊です。

 

 

『悲しくてかっこいい人』イ・ラン

悲しくてかっこいい人

悲しくてかっこいい人

 

韓国のシンガー・ソングライター、コミック作家、映像作家、イラストレーター、エッセイストなど、いろんな肩書がついているイ・ランさんのエッセイ。

日本で言うところの、寺尾紗穂さんみたいな感じでしょうか。とても素敵な文章を書きます。どことなく暗い時代を生きている悲しさと、儚さみたいなのが混じりあっています。Youtubeでいくつかの楽曲を聴くことができますが、歌も良いです。ハングル覚えたいな。

 『彗星の孤独』寺尾紗穂

彗星の孤独

彗星の孤独

 

最近は、シンガーソングライターとしての活動よりも文筆家としての活動が目立っているかもしれません。そんな彼女の久しぶりのただのエッセイです。いろんな社会問題に身を投げていく彼女の行動力も、それを繊細な筆致でどこまでもたよりないものの味方として描く能力も本当に素晴らしいです。 が、あまりにも当事者に寄り添いすぎていて、社会問題を描いた本は、総じてすべて重いです。

こちらは、特定の問題について書いたものではなく、彼女の普段からの問題意識や考えているよしなしごとについて書かれているので、比較的ライトでオススメです。

 『音楽のまわり』という本は、自費出版的に書かれたものです。彼女のまわりの音楽家たちの音楽とは関係のない与太話が書かれています。ユザーンの章だけ、爆笑しました。

 

 『猫はしっぽでしゃべる』田尻久子

猫はしっぽでしゃべる

猫はしっぽでしゃべる

 

熊本の橙書店の店長、田尻さんのエッセイです。最近流行りの書店員本ではあるのですが、長い間小さな町の本屋さんを続けている田尻さんの言葉は、普段から本に囲まれて暮らしている人独特のにおいが感じられて好きです。熊本って行ったことないのですが、文芸誌の『アルテリ』なども田尻さん中心に発刊されていて、どことなく文学の薫りが漂っているイメージです。いつか行ってみたいなあと思いながら、楽しく読みました。

 

 『市場のことば、本の声』宇田智子

市場のことば、本の声

市場のことば、本の声

 

沖縄の市場で、とても小さな古本屋さんを営む宇田智子さんの本です。あ、2回目か。本当に、生き方がかっこいいんですよね。 お店を営みながらも、こうして何度も本を出して多くの人に声を届けることができているのは、彼女自身が毎日の暮らしを繰り返しながらも、常に小さなお店から本を通していろんな世界を見続けているからだと思います。そういう人の言葉は、とても心に響きます。

 

 『ことばの生まれる景色』辻山良雄

ことばの生まれる景色

ことばの生まれる景色

 

私の本の情報の8割は、辻山さんから仕入れています。Titleという小さな本屋さんを営んでいる辻山さんですが、以前は池袋のリブロの店長をしていました。当時からtwitterでの発信を続けていて、非常に素晴らしい選書を呟いていました。ことばの生まれる景色も、いろいろな本の紹介をしています。nakabanさんが添えたイラストと辻山さんの書物愛のあふれることば。本好きには堪らない一品です。

 

『みえるとかみえないとか』ヨシタケシンスケ伊藤亜紗 

みえるとか  みえないとか

みえるとか みえないとか

 

絵本です。「目の見えない人は世界をどのようにみているのか」 という伊藤さんの新書を絵本化したものです。ヨシタケシンスケさんのデザインの力によって、とてもわかりやすく読むことができます。

 詳しくはこちらにも。

lazyplanet.hateblo.jp

 

 『マンゴーと手榴弾』岸政彦

マンゴーと手榴弾: 生活史の理論 (けいそうブックス)

マンゴーと手榴弾: 生活史の理論 (けいそうブックス)

 

社会学はどこから来てどこへ行くのか』という本を読んで、どうして岸さんだけこんなに悩んでいるんだろう、というのがよく分からなかったんですね。そこで、彼の最新の単著を読んでみることにしました。岸さんは研究者として、いろんな人の話を聞き、そこから社会問題を考える職人です。でも、人々の経験と社会問題を安易につなぐことはできないし、でも当事者の経験に裏打ちされない社会問題研究になんの意味があるのか、というところの逡巡が、とても伝わってきます。

それは研究者としてとても大切な「やさしさ」だと思います。そういう「やさしさ」の詰まった本です。

 

 『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』小川たまか

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

 

タイトル長いですが、言いたいことは分かりやすいと思います。小川さんは、#Metooの問題をはじめ女性が抑圧されている、その当事者の声を積極的に発信しているジャーナリストです。

もちろん声を上げ始めた女性たちを応援したいし、「ほとんどない」ことにはしたくない。本当に女性が生きやすい社会は、男性も生きやすい社会だからです。

 

『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ 

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

 

『ほとんどなかったことに』されてきた韓国の女性の小説です。同じことは韓国でも起きている、という話でもあるし、ただふつうに生きているだけなのに、どうしてこんなに苦しいのか、というのがひしひしと伝わってきます。Amazonレビューに韓国の男性らしき人の☆1レビューが並んでいるのを見ると、事態の深刻さが分かります。

 

『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ 

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

 

安定のミランダ・ジュライ、岸本訳です。海外文学ファンならたいてい買っているはずです。最初の悪い男、というタイトルの付け方が非常に上手いです。 一筋縄ではいかないストーリーを見事に訳しきる岸本さん、すごい。荒唐無稽な二人の女性を描いた小説ですが、どこか愛の感じられる物語になっています。映画にしたらすごくいいだろうな、と思う。

 

 

終わりに

書き始めて、後悔しました。ここまで、約15,000字。まあ、でも書き始めたら止めるのももったいないし、とようやく書き終わりました。普段あんまりレビューとか書かない人間だったので、振り返ってみるのもいいかな、と思いました。

メルカリで売ってるから、半分以上は手元に無いのですが。でも、いい本は、買い直したくなるんですよね。

これ書いている途中も、何冊か買い直しました。そうすると、2,3年前の本は500円くらいで買えてしまいます。レンタル倉庫に本をしまっておいて、取り出すときの手数料とか考えると、やっぱり手元に置いとく必要はあまりないかもしれないですね。

良い本は、いつのまにか手元に戻ってきます。だから、良い本は次の読み手に渡したくなります。

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#子連れ出勤 もあったらいいけれど

子連れ出勤の件、あったらあったでいいと思います。

無いよりは。

おおよそ、皆の言いたいことは下記の記事にまとまっています。

wezz-y.com

・政府が推奨するものではない。

・母親前提かよ、3歳児神話に近い。

・待機児童が先。

・保育園があれば必要ない。

・満員電車が危険。

・仕事に集中できない。

などなど・・・。

 

実際、去年うちは1日か2日だけ、子連れ出勤しています。地震で学校休みになったけど、仕事行かなきゃ、とかそんな理由だった気がします。

インフルエンザで学級閉鎖になったけど、仕事行かなきゃ、って場合も今後発生するかもしれないですね。

 

妻の職場の方が近かったので、妻のほうに行きましたが、たぶん私の方でも大丈夫でした。(妻の職場は歩いて5分。私は自転車で10分)

職場に、そこそこの広さの休憩所があって、満員電車を回避できて、恒常的な利用ではなく、保育園・学童などのメインの預け先があるのが前提ですね。どっちにしろ、緊急避難的な理由が主です。

そういうときに「子連れ出勤ができる環境が整っている」ということは、ありがたいと思います。

もちろん、在宅勤務ができる環境でも、リモートワークできる環境でも、同じです。

 

そのなかでも、子連れ出勤のメリットとしては、

・ほかの親の子どもも集まるから、子ども同士で遊んでくれる

・家だと集中できないけど、オフィスなら仕事できる(会議室に逃げ込むことも)

・オフィスの休憩室のほうが広い(場合もある)

 

一番は子ども同士で遊んでくれることですね。だいたい、子連れ出勤するときって、他の学校も休みになったけど仕事に行かなければならない、という事情が共通して発生するときなので。

 

ただ、上記の場合も想定する年齢層がたぶん違ってきますね。子ども同士で遊べる3歳~小学校高学年くらいまで、になりそうですし、乳幼児を子連れする、という場合、なかなか仕事にならないというのが実情ではないかと思います。

 

小学生になると、イレギュラーな出来事も多々起きるので、「たまに子連れ出勤してもOKな雰囲気」を全体的に作ってくれるのはアリだなぁ、と思いますが、保育園の代替として子連れ出勤なんて無理ですよ、というところですね。

 

 

蛇足ですが、こないだ、とあるコワーキングスペース「子連れで昼から飲みましょう」みたいな素敵な企画があったので、イベント撮影もかねて行ってきました。

juso-coworking.com

子どものいるご夫婦が運営されていて、1階がラウンジ、その上がオフィススペースなのですが、ラウンジでは子ども食堂などもやっているようで、子どものおもちゃなどもいっぱい置いてあり、楽しそうでした。

こういうオフィスをサテライト的に使う人事制度を設ける、というのもアリだなぁと思いました。家の近くにあれば、満員電車も乗る必要ないし、気軽にドロップイン利用して、必要な仕事だけする、ということもできるでしょう。

「いろんな選択肢を用意しておく」というものの、一つの事例として。

 

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買いたい本リスト #2019年1月

あけましておめでとうございます。

最近、noteに浮気をしていますが、こちらを忘れたわけではありません。

note.mu

実用的なこと、社会的なことは、はてなに書き続けようと思います。noteは思いついたままの言葉を残しています。しばらくしたら、運用レポ書きます。

楽天お買い物マラソンで買いたい本

読んでよかった本のレビューを書こうと思っているのですが、それよりも先に読みたい本が増えてきたので、主夫ブロガーらしく?お買い物マラソンになぞって紹介です。

 

 以下、とりあえずカートに入れたものです。買うかどうかは分かりません。

パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶

パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶

 

高くてなかなか手が出ないんですが。。 

 

すいかのプール

すいかのプール

 

こちらは、韓国の絵本風の本ですね。 

 

ヒロインズ

ヒロインズ

 

フェミニズム文学。 

 

ジョルジュ・サンド 愛の食卓:19世紀ロマン派作家の軌跡

ジョルジュ・サンド 愛の食卓:19世紀ロマン派作家の軌跡

 

こちらも評判いいですね。 

 

味見したい本 (ちくま文庫)

味見したい本 (ちくま文庫)

 

食のライター、木村さんの本です。文庫なのがいいです。 

 

今年、きちんと勉強したいテーマです。 

 

社会学関連の本はこちら。ヤンキーの世界、気になっています。 

 

サンダー・キャッツの発酵教室

サンダー・キャッツの発酵教室

  • 作者: サンダー・エリックス・キャッツ,サンダー・E・キャッツ,Sandor Ellix Katz,和田侑子,谷奈緒
  • 出版社/メーカー: ferment books
  • 発売日: 2018/10/26
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

「発酵」ブーム、まだ続いていますね。

 

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

普段あまり読まないジャンルですが、一応。

 

うまくばらけて買えば、5,6店舗くらいの買い回りは達成です。

ただ、最近ネットで注文しても、在庫がなくキャンセルされることが多いです。小出版社の本が多いので分かるといえば分かるのですが、メルカリだってそんなことほとんどないのに・・・!といつも怒りの☆1つレビューをします。

 

twitterの「#2018年の本ベスト約10冊」というハッシュタグを振り返っていて、気になった本が主です。

 

楽天room、私もこっそりやっています。今見たら意外とフォロワー多い。。(このプロフィール、ちょっと嘘入ってる)

room.rakuten.co.jp

 

実家でやりたいこと

実家でやることがあまりないのですが、とりあえず。

 

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  • 檀家寺の確認

菩提寺、という方が一般的なのかもしれません。葬式の時などに供養などを依頼する代々継がれている寺です。今まであまり意識してこなかったけど、一応今後のことも踏まえて。住所や連絡先をスマホで撮ったので、とりあえずOKです。

  • 年賀状

今書いてます。頑張ります。

 

  • 今年読んだ本まとめ

余裕があれば、詳細のレビューも書きます。

すでに書いてるのも多いですが。

  • テレホンカードの回収

災害時とか、こないだのソフトバンクの電波障害みたいな時のために、何枚か確保しておこうかと思います。

実家で昔集めてたものがいっぱいあります。f:id:lazy-planet:20181230131934j:image

  • 今年の振り返りと来年に向けて

今年は、意外とブログ更新が続きました。おかげでつながった関係もあり、日々読んでくれている皆様に本当に感謝です。

ただブログを続けていると、ちょっと意識高めになってしまいやすいので(人は自分をよく見せがちなものだし強い言葉のほうが人に届きやすいし)、ちょっと意識下げることも来年は心がけたいなぁ、と思います。

自分の弱い部分、ダメなところはいっぱいあって、なのにこんな風に発信してていいんだろうか?という折り合いをつける難しさがあります。

 

来年もまたブログは続けたいですが、自分がどこか強い者の側に立って発信していないかどうか、よく考えながら書いていきたいと思います。

 

 

 

 

2018年(メルカリで)買ってよかったもの、よくないもの

メルカリは売る方が多いのですが、買うこともあります。

ということで、よくある「買ってよかったもの」話ですが、メルカリで買ってよかったものとよくないものを紹介します。

買ってよかったもの

ほんと、良かったです。中古で、単焦点レンズ付きで57,000円。決して安くありませんが、今年このカメラで稼いだお金で、半分くらいは元が取れた気がします。今の私にとっては必要な投資でした。 

 

モバイルwifiです。格安SIMを挿して使っています。12,000円。主に車で出かけるとき、家族でタブレットを複数台使うときに便利です。液晶割れしたので、2代目です。

 

これも2台で12,000円。ちょっとわかりづらいのですが、うちの照明、テーブルの位置と合ってなかったのです。うちが古い団地で、ダイニングとリビングが分かれていた頃の名残なのですが、使いづらかったので、ダクトレールを購入し、かつこちらの照明でテーブル上を照らすようにしました。

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ダクトレールもヤフオクで購入。 たしか4,000円ほど。リモコン付きなので、照明のスイッチも1か所にまとめられたのも良かったです。

 

マグネット将棋セット MS?16

マグネット将棋セット MS?16

 

こちら、2セット800円で購入。学童のおもちゃがいろいろ不足気味で、将棋もコマが全部揃っていないという状態だったので、寄付しました。

良くなかったもの 

スミマセン、結局2か月ほどで使わなくなりました。体重はピーク時からめでたく4kgほど落ちたので、まあ御役目は果たしたのかもしれません。4000円ほどで購入しましたが、そろそろ次の持ち主へと出品しようかと思います。 

 

子ども部屋(になる予定の部屋)に溜まっている本を収納する、棚を作ろうと思い、その背板用に購入したものです。…が、設置場所の交渉が難航しており、まだ使えていません。5mm×90mm×900mmの板40枚が4000円。相談する前に買うな、とのご指摘はご尤もです。

 

 あとは、ひたすら本を買っています。買ってよかった本は挙げていくとキリがないので、やめておきます。本のまとめはいずれ、また。

 

lazyplanet.hateblo.jp

 

クリスマス

はてなブログ運営は、こういう時期は特殊なお題じゃなくて時節に合ったお題を提供すべきですよね。

と思いつつ、時節に合った話をします。

クリスマスプレゼント

小学1年生のうちの子は、サンタさんをまだ信じています(たぶん)。

www.cnn.co.jp

トランプ大統領はこう語りかけた。「まだサンタを信じている? 7歳といえば、ギリギリだね。そうだろう?」

7歳はギリギリ(marginal)なのか。。

私は今も信じています。毎年この時期になると、「サンタクロース」と名付けられた購買意欲増強装置から発信された電波の影響を受け、世界中の多くの大人たちがおとぎ話のサンタクロースの代行という形で贈答業務を行うのです。

という内容に近いのが、この絵本です。

ひゃくおくまんのサンタクロース

ひゃくおくまんのサンタクロース

 

 

さて、今年のサンタさんからのプレゼントは、 「ゆらゆらしながら滑るボード」です。

なんのことかわかりませんね。。

こんなようなものです。 

 

なんか、どれを買えばいいのかよく分からず、名前もジェイボード、エスボード、ブレイブボード、なんかいろいろあります。作っている会社が違ったり、なかには粗悪品もあるということで、とりあえず無難に「リップスティック」という名の公式っぽいものを選びました。

公式サイトによるとブレイブボードとは、『地面をけらなくても前に進む次世代ボード』とのことです。

スケートボードとの大きな違いは、従来のスケートボードが1枚のボードに4つの車輪が付くのに対し、前後2枚のボードそれぞれに車輪が1つ付き、パイプでつながっていること。

この革新的な構造によって、横乗り姿勢で足を前後させるとボードがしなり、ダイナミックに加速してサーフィンやスノーボードのような動きを平地で楽しむことができるのです。

これで遊びながらバランス感覚が身につけられるのがいいですね。

最近、一輪車はすいすい乗れるようになり、体操の習い事でマット・跳び箱、鉄棒など基礎的な身体能力は身についているので、少し早いですがたぶん乗れるだろう、と(サンタさんが)判断しました。

 

youtubeで乗り方の動画がいくつかあるので、それを見てさっそく乗ってみました。

www.youtube.com

(1時間後)

 

意外と乗れる!!でも進まない!(絵が無くてすみません)

 

とにかくホイールがよく回るので、最初に手をつないで乗って勢いよく私が押し出すことで加速してる、、という感じになっています。足を動かすのが難しい。体を使って動かすのはさらに難しそう。でも、とても楽しいようです。

 

ちなみに大人も乗れる耐荷重と大きさということで、私も乗ってみたのですが、全っったく乗れません。。 

クリスマスディナー

近くに住んでいる後輩家族が(いつものように)ケーキとお酒を持ってきてくれる、というので、賑やかにパーティしました。

妻が買っておいてくれた食材で、なにかを作るというクイズかパズルみたいなことをウチはよくやります。だいたい予定通りとのこと。

 

以下、写真。

サラダ、グラタン、シュトーレンのようなパン。

 

モッツアレラ

 

鮭と野菜をオーブンで焼いたやつ。

 

箕面ビール。

 

ケーキ。

なぜかロウソクがついていて、でもキリスト明日だし、あきひと(今上天皇)でいっか、といってバースデーソングを歌いました(酔ってる)。

 

ケーキはここのお店のものです。チョコレートケーキがとてもおいしいお店です。

solilite.site

 

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初めての撮影会主催と、撮影のお仕事

主に、「写真」の話です。

撮影会イベント

先日、写真の撮影会イベントを開催しました。

Snapmartという写真販売アプリの非公式ユーザーオフ会という形ですが、妻も含め参加者の半分くらいはアプリユーザーではない、というその時点でかなり緩いイベント。。

lazyplanet.hateblo.jp

準備段階から慣れないtwitter告知をしながらやってきたんですが、結局人集めはほぼ人力でした。つまり友人・知人を誘う、ということです。

ネット上では私よりも、東京のユーザーさんやSnapmartの中の人が積極的に告知してくれていて、私はおまけのように呟いていました。

友人・知人の多い、もう一人の企画者がたくさんの人を連れてきてくれたおかげで大盛況?でした。普段私が撮ることの少ない写真撮影ができたことも、収穫でした。とても楽しかったです。

 

 

撮影会の反省点

コミュニケーションツール

事前にSlackでコミュニティを作ってやり取りしたけど、撮影会後、結局LINEグループに落ち着きました。Slackのほうがトピック別の話題は便利なんですが、実際にほぼ「雑談」チャンネルしか使ってなかったので、人数が少ない場合はLINEで十分かもしれません。LINEでつながっていれば、当日の待ち合わせ時とかも通話でやり取りできて便利でした。

自己紹介タイム

待ち合わせで、ドタバタしてしまって、まとまった自己紹介タイムなく始めてしまいました。みんなコミュ力高い人たちでよかった。モデル撮影慣れてる人は、被写体を緊張させないために、だいたい気さくな方が多いですが。

移動

撮影は枚方T-site内の一部スペース(※事前に電話連絡で許可は頂いています)、付近の大学構内のテラス(※こちらは当日受付で許可をいただきました)で行いました。

が、思った以上に大学が遠くてバスも混雑していたため、行きも帰りも15分ほど歩いていくことに。。ベビー連れのママさんが集まったので、正直バスは厳しいかな、というところだったのですが、みんな若くて元気な人たちでよかった。

子ども放置しすぎ

写真撮影楽しすぎて、子どもたちを放置しすぎました。もちろん、子どもたち同士で楽しく遊んでいたし、撮影にも交じっていたのですが、彼らはしばしば予想外の行動を取ります。特にやんちゃな男の子、マジで一瞬でも目を離すと怖いです。みんな強くてかわいい子たちでよかった。

写真の共有

モデルの参加者さんにお渡しする分は、とりあえずはLINEでいいかな。ただ画素数は明らかに落ちるので、かといってPC持ってないという場合もちゃんと考慮しないと、と思いました。まあDropboxはアプリもあるし、大丈夫かな・・。

 

というところです。

 

ちなみに、今回SONYと契約しているプロのカメラマンにも来ていただいて、ご厚意で非常に高い機材を貸していただいた上に、さまざまな撮影技法のレクチャーをしていただきました。こちらからのギブはちゃんと与えられたかどうか…。本当にありがとうございました。

イベント撮影の仕事

撮影会の次の日ですが、初めてイベント撮影のお仕事をいただきました。ありがたいお話です。せっかくなので、別の予定をキャンセルして、依頼をうけました。

京都で行われた、こちらのイベント。経営寄りの仕事をしている3人の登壇者が、参加者との対話も交えながら、「働くこと」について語る、というイベントでした。

はたらくを語る【ライブ配信あり】

参加者はフリーランス、学生、パラレルキャリア、主夫(私です)、など様々な人がいました。というか一般的に本業だけの会社員という人がいなかった気がします。

 

カメラマンとして、イベント撮影するのは初めてでしたが、お酒飲みながらのイベントなので、飲みながらでいいですよ、と言われ遠慮なくお酒頂きながら撮影しました。

照明が暗いうえに、プロジェクターの投影だけが明るく、なぜかミラーボールが回っている、という条件的には最悪な撮影場所でしたが。

1000枚以上撮って、約100枚ほど選定してお渡ししました。デジタルありがたい。

笑顔の多い和やかなイベントだったので、そんな楽しさが伝わる写真になってればいいなぁと思います。

撮影の反省点

存在感を消す

イベントの進行を妨げないように、極力存在感を消します。シャッターはサイレントですが、それ以外のダイヤル操作もなるべく静かに。もちろん、フラッシュも使いません。移動するときに邪魔にならないように気を付けて。

でも、半分くらい参加者としてやっているので、普通に質問したり話題が振られたりします。バランスが難しいですね。

なるべく違う絵を

ひたすら同じ登壇者を撮っていてもしょうがないので、なるべく構図に変化を持たせています。雰囲気が伝わるよう、あえて参加者の後ろ姿を前ボケに持たせたり、アングルを変えたり。にしてもバリエーションが少なかったので、レンズをもっと持っていけばよかったな、と反省。

「ろくろ回し」について

経営者インタビューなどでよく見られる「ろくろ回し」のときって、手が止まってるのでカメラマンとしては撮りやすいんです。手が前に出ることで、写真に奥行が生まれます。もちろん、そういう構図も分かりやすくて求められているだろうから撮るわけですが、それだけだと面白くないですよね。

hatenanews.com

手元を写さない、全身を写す、などろくろを意識させない構図を意識したのですが、やっぱり「ろくろ回し」だなぁという写真が多くて反省です。

撮影後の処理

撮影したものを、そのまま渡す、ということをしている人は少ないと思います。

ある程度、選別・加工(現像)したうえでお渡しします。ただ、それに時間を掛け過ぎると、リアルタイムにイベントの報告をアップしたい先方のニーズに応えられないので、その日のうちに終わらせています。それでも作業としては大変なので、効率的にパパっとやる「慣れ」が必要です。

そういうのは、今後はAIがやってくれる時代になるんだと思います。じゃないと撮影の仕事はコスパ悪いです。

カメラは、もともと趣味として社会人になってから始めたのですが、今はこうしてわずかながらも、私の収益源ともなっています。

ブログで記事を書くにしても、子どもの写真を撮るにしても、いい写真が残せるに越したことは無いので、特技としても活かしつつ、楽しい趣味として今後も付き合っていきたいなぁと思います。

 

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『学校における働き方改革』を親の目線から読む

中央教育審議会が提出した、『新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体
制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について』という長々しいタイトルの資料を読みました。長いのはタイトルだけではないのですが。

学校における働き方改革特別部会(第20回) 配付資料:文部科学省

news.yahoo.co.jp

この記事の妹尾さんは、中教審の委員の一人です。Yahoo!の記事でかなりかみ砕いた内容で、現状の問題点や制度の不備を伝えています。

が、審議会の委員にこういう人がいても、こんなひどいレポートになるのか、というほどお腹を下しそうな内容の答申素案になっています。

(※校長先生が飼っているメダカです)

何がおかしいのか?

長いレポートのなので、3行でまとめまます。

・授業時間増・部活の激化・学校業務の肥大が長時間労働の原因

・学校が担うべき業務以外は「(現行の)事務職員」「地域ボランティア」へ

ストレスチェック、上限360時間、変形労働時間制などを導入

です。

これだけ見ると、そんなにおかしくないのでは?と思うかもしれません。

明らかにおかしいと思われる表現などは至る所にあり、それは言及するのも面倒なので省いていますが、要旨だけみても、やっぱりなんかおかしいです。

 

まず予算を投じるつもりがカケラも感じられません。事あるごとに「ボランティア」です。ちゃんとカネを払え。

現行の事務職員の時間や地域ボランティアの担い手はどこから湧いて出てくるんでしょうか?それらがないままに、上限と制度だけが設けられたら、どうなるのか。

 

地域地域って、地域にいるのは、高齢者と一部の専業主婦・主夫だけです。その人たちだって、みんな自分の生活があります。自治会やPTAの仕事すら、面倒で断る人が多いのに、ボランティアを買って出る人がそんなにたくさん湧いてくるはずもありません。

 

報告書を読んで私からの提言

・残業代が出ないから、ろくに時間管理もできていないんじゃないの?

在宅ワークの時間含めて、徹底した時間管理をしませんか?

・そのうえで、在宅ワークが可能な環境構築しませんか?

・登下校の見守りとか要らないから、入り口に入退室システムつけませんか?

・出欠確認とか紙の連絡とか要らないから、グループウェア使いませんか?

・生徒の成績・出席状況その他管理も、人事システム入れませんか?

・プログラミング教育とか要らないから、Google Clasroom使えるようにしませんか?

・ランドセルに5万出せるんだから、子ども用にタブレット買えるんじゃない?

edu.google.com

・部活とかいいから、民間のクラブでも大会出られるようにしませんか?

・なんで学校単位で部活やるの?合同でやれば負担減りませんか?

・学校の事務とか市区町村単位で一元化しませんか?

・管理職クラスの先生までコロコロ異動させたら、何も改善できなくないですか?

・学童の先生をフルタイムにして、休み時間や給食はその先生にお任せしませんか?

・学校と地域はすでに結びつきが強く、これ以上地域への負担を強いないでください。

 

現実味のない「地域」という資源に頼るよりも、小手先の積み重ねでいいから具体的なすぐに実行可能で有用性のある改善施策をしてくれませんか?というお願いです。そのためのシステムやツールはいっぱいあるはずです。

もちろん学校単位でやっている施策もあると思いますが、紙と電子の二重の運用になっていたりと余計に非効率になっているケースも散見されます。徹底した効率化を全国単位でやれば、かなり改善されると思います。

そのための旗振りは文科省が行うべきです。 

lazyplanet.hateblo.jp

親からの理解

中教審は「先生の多忙」について親への理解を求めています。

最後に、中央教育審議会として保護者や地域の方々にお願いをしたい。

~略

その教育の最前線で日々子供たちと接しながら、子供たちの成長に関わることができる喜びが大きいとはいえ、つらいことがあっても、自らの時間や家族との時間を犠牲にしても、目の前の子供たちの成長を願いながら教壇に立っている現在の教師たち。

これまで我々の社会はこの教師たちの熱意に頼りすぎてきたのではないだろうか。

所定の勤務時間のはるか前に登校する子供のために、自分はさらに早朝に出勤する教師。平日はもちろん一般の社会人が休んでいる休日まで子供たちの心身の成長を願い部活動に従事する教師。子供の様子を一刻も早く共有するため仕事をしている保護者の帰宅を待ってから面談をする教師。

こうした中で教師たちは長時間勤務を強いられており、そして疲弊している。

今回の学校における働き方改革は、我々の社会が、子供たちを最前線で支える教師たちがこれからも自らの時間を犠牲にして長時間勤務を続けていくことを望むのか心身ともに健康にその専門性を十二分に発揮して質の高い授業や教育活動を担っていくことを望むのか、その選択が問われているのである。

だそうです。(全体的にこんな調子の胃がもたれる文章です。)

私たちは、そんなに多くのことを本当に先生に望んでいるんでしょうか?

digital.asahi.com

たしかに、先生に残業代が無いことも知らない親もいます(約6割という記事が以前ありました)。先生が疲弊してたら困る、というのは当たり前の話です。疲れたら休んでください。健康が一番大事。

 

でも、仕事でも取引先が急に納期守らなくなり事情を聴くと「実は急に人が辞めちゃって・・・」となったら、「それはおたくの都合ですよね?仕事はちゃんとやってください」と返すのが普通です。そういう信頼関係の元に仕事を依頼してるからです(もちろん、気持ち的にはとても同情しますし、待てるなら待ちたいです)。仕事をしている以上、継続してこれまで通り業務できるようにする責任が(先生ではなく学校に)あります。

学校が「子どものために」無理な要求を飲んで来たのであれば、それは学校側の責任です。生徒とその親の立場からすれば、「確実に業務を遂行できる管理体制と組織」を整えてもらってその責務を全うしてもらう、というのは、最低限の要求です。

「それは学校の業務の範囲外です」「無理なことは無理」、と先に言ってもらえたほうが、親としてもありがたいのです。

学校の「非効率的な仕事のやり方」を含めて、充分理解している親も多いのではないでしょうか。

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東大を舐めている人と縛られている人

先週は、note界隈で、「東大」がキーワードになる話題がホットだったなぁと思って。

どれもタイトルだけでお腹いっぱいだし、長いですが興味があれば。

note.mu

note.mu

note.mu

みんなコンプレックス抱えてますね。東大の人も、そうじゃない人も。

もちろん、それは誰にでもあるものなので、決して良い悪いで測るものでもないと思います。言語化されたものだと「無意識の偏見」ですね。

www.nikkei.com

 

と言いつつ、お前のブログの名前も何なんだ、と突っ込まれそうですが。

 

これはただのSEO対策です。主夫も京大卒も「アイコン」としては覚えられやすくて、便利だなぁというただそれだけの理由です。

学歴という記号

「学歴」って結構厄介な記号です。主夫の私だから堂々と言いますが、学歴が高いからといって、収入が多いとは限りません。幸せかどうかも人それぞれです。

それなのに、ときどき統計の指標としてそれが使われるので、誤ったストーリーを描かれがちになります。私は統計に「学歴」が出てきたらだいたい疑います。

 

京大卒でも東大卒でも、ほとんどの人は少し周りよりお勉強ができただけで、それ以外は何も変わりません。

 

それでも、「そうはいっても・・・」という気持ちを皆抱えているから、こういう記事がホットになるんだと思います。

 

高学歴の主婦・主夫問題については、子育て界隈でも時折話題になります。

lazyplanet.hateblo.jp

(古い記事なので、少し加筆修正しています。。) 

学歴への私費投資の是非

少しだけ論点を整理すると、今の日本は、それなりの学歴を得ようとするとそれなりに教育資金が要る社会です。lazyplanet.hateblo.jp

そして、多くの人はそれを追認する形で認めています。

最初の大学生の記事は、その努力・私費を費やしてきた時間を長々とした文章で訴えています(私も飛ばし読みですが)。

だから「東大に入るには、カネがかかる」というのは、正論です。一方で、そういう地平とは全くべつのところで、「東大」というステータスが軽く扱われていることが気に入らない、というのが彼の文章からは伝わってきます。

 

お金がかかるし、すごく勉強しないと入れない、というのは皆知ってるのに、どうして「東大」はよっしゃ東大目指すぞ!みたいなノリで軽く捉えられるのでしょうか。

 

富士山に例えてみる

たぶん、「富士山」が分かりやすいですね。

このご時世、素人が軽く「明日、天気良さそうだし富士山登ろうかな?」とかツイートしたら、山の専門家から「お前舐めてんのか、山を」とお叱りを受けると思います。

mainichi.jp

実際、こんなことがあったようなので、舐めていてはいけません。

でも、確かになんか遠目で見てると「登れそうだな、あれ」って気がします。そして多くの人は挑戦してみても、最後まで登る人は少ないですよね。もちろんそれぞれの楽しみ方があるので、最後まで登らなくても、楽しめればそれでいいのですが。(私もとても登れる気がしません)

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これは鳥取の大山ですね。

「東大」というのは、ただの分かりやすい記号にすぎません。「富士山」と同じ日本一。ただそれだけです。

でも、富士山登頂記みたいなのは読まれても、富士山挫折日記は読まれないのかもしれません。私は挫折日記も読んでみたいです。

 

「東大卒」というレッテル

では、2つ目の記事について。

ここでは、「社会に出てからも舐められますよ、東大生は」と忠告しています。

 

彼女に私が言えるのは、それはただ「パワハラを受けているだけなので然るべき相談窓口へ」です。おそらく、その会社では東大じゃなくてもいろんなスキを突いて、「~のくせにそんなのもできねえのか」と言ってきます。

 

そうした「隙」は、スティグマあるいはレッテルとして説明できます。

その人の抱える有形無形の属性を突いて攻撃してくる人は、大学という環境から一歩踏み出せば至る所にいると思います。

「レッテル」「スティグマ」などさまざまな言い方がありますが、それらは、ネガティブな属性だけではなく、ポジティブな属性にも使われます。

 

分かりやすいのが、「美人」とか「イケメン」とかですね。

「美人のくせに、性格悪い」「イケメンのくせに、仕事できない」見た目と性格・能力に何の因果があるのか、と。

かといって、「私が仕事できないのと、イケメンなのが何か関係ありますか?」と開き直ることもできません。「仕事できないのは、自分が悪い」と思いがちだから。

でも、その人がうまく軌道に乗れるように導いていくことは本来は会社側の仕事です。モチベーション高いままスマートにオン・ボーディングできたら、そのほうが経営効率も定着率もよくなります

「オン・ボーディング」とは? - 『日本の人事部』

 

学歴の高低にかかわらず、レッテル貼りでその人の価値を不当に貶めることは無意味です。とはいえ、皆そんな透明なメガネをかけてはいないので、甘んじて受け入れてる人の方が多いと思います。世知辛い世の中ですね。

 

学歴とジェンダー意識

最後にこれです。

東大で行われた、東大生の多く集まる場で、かなりの程度の低いやり取りが行われていたことに、最後の記事の著者は違和感を感じています。

でも、学歴が高いからといって、”まっとうな"ジェンダー意識((ジェンダーレスともジェンダーフリーとも違うし、現代的な意味でジェンダー意識高い系ととらえてください、すなわち女性の権利や現状の生きづらさ等といったものに理解はあるんでしょうか?

 

ここ最近の、医学部の差別的対応を見ると、学歴(賢さ、社会的階層の高さも含め)関係無いんじゃない?と思います。

このあたりは、学歴と性別役割分業という文脈でいろいろと研究されてるはずですが、これまた学歴が統計に絡むと厄介です。

低い学歴であれば、低賃金労働から共働きせざるを得ない状況になり、逆に高い学歴だと一人の稼ぎで賄えてしまう、という逆作用が働きます(大雑把にいうと)。だからといって、単純に高学歴のほうがジェンダーへの理解がないとは言えません。正しく理解ある男性であり、合理的な理由があれば、性別にとらわれない役割を果たすでしょう。

 

一般に、家事・育児の性別役割分担という意味では、いくつかの仮説があります。

・学歴差や所得差が少なくなるほど家事分担が平等化するという相対的資源仮説

・時間的制約の少ない方が家事を行うという時間的制約仮説

・男性=稼ぎ手の意識が強いは男性の家事参加が低いというイデオロギー仮説

・家事・育児のニーズそれ自体が大きければ男性の参加が高まるというニーズ仮説

・世帯内外で夫婦以外に家事の担い手がいれば男女とも家事参加が減る代替資源仮説

・夫婦の情緒関係が強いほど家事育児を夫婦が一緒に行うことが増加し,夫の家事参加が高まるという情緒関係仮説

(※『共働き夫婦の家事・育児分担の実態』下記リンク参照 より抜粋)

日本労働研究雑誌 2017年12月号(No.689)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

 

単純に学歴だけでどうこう結論づけることはできません。ただ、学歴が高かったとしても、ジェンダーについての知識が不足していれば、当然ジェンダー意識の高い学生は現れます。

話を東大で行われたイベントに戻すと、その場の雰囲気は実際には分かりかねますが、ジェンダーフェミニズムの未履修者が多数いたのではないかと思われます。いくら他の勉強をしていたとしても、地頭のよさだけで、高度なジェンダー意識が身につくとは思えません。

東大においては以前もこんな炎上を起こしています。

www.todaishimbun.org

覚えていますか?旅行会社が企画した「知的な東大女子が飛行機で乗客の隣に座って過ごす」というアレです。これは、その後東大内で実施されたアンケートで母数は少ないので、話半分くらいにしか信用できませんが、

この問題に対して、「東大のジェンダー的な問題は深刻だと思うか」の質問に男子は回答者の2割弱が、女子は4割が「はい」と回答している

とのことです。そもそも東大自体に女子は少ないし、母集団もその割合に近い数ですが、それでもこの差は深刻だし、そもそも女子ですら4割しか問題と思っていないところが、深刻です。他大学に比べたらマシ、くらいに思っているのかもしれません。

東大でも、(社会・教育・哲学等を除く)一般の学生であれば、特に日常的な場面においてジェンダーにおける「意識高い系」は少数派である、というところだと思います。

このnote記事自体も、東大に過剰な期待を寄せているところがあるような気がしてならないです。この人は「東大ブランドを傷つけられた」と反論者の多くを分析しているようですが、たぶん間違ってます。

自分の所属組織のことを悪く言われたら、誰だって俺はそうじゃない、とかこれは正確じゃない、と言いたくなります。東大関係者だってその例外ではない、というだけのことです。

 

なんか、学歴って面倒ですね。でもそれを無かったことにされると、本当に受験勉強頑張ってきたその努力は報われないことになりますし、でもそればっかりに縛られず、一定の効果を期待しつつも過剰に期待を寄せないという、扱いの難しさがあります。

 

学歴(偏差値)も収入も、具体的な数字で分かりやすいモノサシである、というだけで、それで測れないものはいっぱいあります。

私も収入で測られたら辛いものがありますが、それで測れないものが、何かあるはず・・!と前向きに生きようと思います。

 

追記

2015 - Information - マイクロソフトのダイバーシティ - Microsoft

マイクロソフトが、"Unconscious Bias"についての無料のe-Learning講座を公開していますね。英語ですが、日本語解説があるので、分かりやすいです。

Home - Learn

スーパーで働く主婦の『安定と処遇格差』の共犯関係

『主婦パートタイマーの処遇格差はなぜ再生産されるのか』という本を読みました。

昨年末に出版された、とても分厚い鈍器本です。大きな図書館なら置いてるはずです。(値段も高いので買わないように。)

なぜ、この本を手に取ったかと言えば、私がスーパーマーケット産業で働く"主夫"パートタイマーだからです。この本の調査対象のコミュニティにどっぷりと属しています。

ちなみに、今の勤務形態も賃金も満足しているから、働いています。その前提のうえで、この本をレビューします。

主婦制度と主婦協定

スーパーにおける主婦のパートタイム労働者は、低賃金にもかかわらずとても安定して何十年とその会社に属しています。この本の問いかけは、「なぜそんな待遇なのに、皆そんなに働いているの?」というところから始まります。

それをひも解くために、膨大な量の聞き取り調査を各関係者に行い、人事制度や市場構造などもふまえて考察しています。

そのなかで、彼らが働くうえでどんな考えをモデルにしているのか、というところを見出しています。その鍵概念が「主婦制度」と「主婦協定」です。

「主婦制度」とは

男性稼ぎ主型ジェンダー・システムに基づいて、私的家族における役割と地位であるはずの主婦という役割と地位を、社会的な役割と地位にする『制度の束』(12 頁)

「主婦協定」とは

主婦であるパートタイマーの家庭優先性の保証を主な内容とする、パートタイム労働市場における行為者たちの行為ルール(13 頁)

と定義しています。

これらは働く主婦たちが、暗黙のルールとして内面においている行為の規範であると同時に、明文化して会社の制度としてルール化した外部規範でもあります。

もちろん、実際にそんな名前の制度や協定が存在するわけではなく、これは著者の造語です。複数の内部的・外部的なルールが束となって、「主婦」という立場を保証し、社会的な役割と地位を約束する制度が出来上がっている、ということです。

興味深いのが、彼女たちがこのルールをうまく利用していることで、完全にそれを内面化していることです。内面化とは、すっかりそのルールが染みついてしまっている、自分の行為の基準になってしまっている、ということです。

それが、格差の再生産につながっていると指摘しています。

 

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スーパーにおける正社員と非正規社員

ここで、スーパーの労働構造について少し説明します。

基本的にどのスーパーも、少数の(男性)フルタイム正社員と、多数の(女性)パートタイマーで成り立っています。正規・非正規に男女の制限はないにも関わらず、私のようなパートタイム男性は少数で、フルタイム女性もまた少数です。

 

その理由としては、フルタイム社員の労働強度の強さがあります。基本的に365日毎日スーパーは営業しています。

店長・主任など責任ある立場であれば、休みの日であっても不測の事態が起きれば対応する必要があるし、多数の商品を取り扱うスーパーでは、不測の事態が至る所でよく起こります。そして、季節・天候・テレビCM・特集、様々な要因でトレンドが変わり、売れ筋が変わります。店勤務でなくても、それらに対応しなければならないのは同様です。

異動も頻繁にあります。異動が決まれば、2週間前後で赴任地にいきます。場合によっては単身赴任、引っ越しを伴うこともあります。

まとまった休みがとれる時期はわずかで、 「連続休暇」という特殊な休暇形態を初めて聞きました。それは、まとまった休みが取れる制度ではなく、土日に休ませないための制度です。

 

一方で、パートタイマーは、働く時間もシフト制で比較的自由に選ぶことができます。繁忙期・繁忙時間帯はもちろんあります。しかし、子どもの病気や自身の体調不良、その他の都合に合わせて休みを取るのは比較的簡単です。

スーパーマーケットは、チェーン展開で全国あるいは地域で複数店舗展開している大企業であることが多く、福利厚生も社内制度も整っています。パート社員であっても有給は取れるし、要件を満たせば健康保険に加入する義務があるし、教育や研修を受けることもできます。従業員割引もあります。

現在のスーパーマーケットは、正社員比率を低くしていくことで、競争力を維持しています。安売りをしない、チラシも出さないコンビニのほうが確実に人件費率が低く、それらに対抗するには、長年勤めている大量の高技能低賃金パートタイマーによる支えが必要です。だからこそ、彼女たちをつなぎとめるための(賃金以外の)環境改善は常に行われています。

「主婦として」働くための環境面では恵まれており、労働柔軟性は非常に高いのです。

 

本書の指摘と今後

本書の指摘は尤もなことです。たしかに、主婦が自らの働き方を内面化していることが格差の再生産につながっています

外部からの観察で、このことを綿密に描き出しているのは本当にすごいと思います。読んでいてとても面白い。けれど、話がかなり古いです。昨年末に出された本なのに、10年近く前の調査が描かれています。この本の終章で提示されている「新たな人事制度」は、既にもう過去の制度となり、さらに新しい人事制度に代わっています。

 

ただ、人事制度が変わっても何ら状況は変わっていません。少しだけ変わっているのは世の中のほうです。

世の中の 『働き方改革』の強い流れに押されて、これまで無制限で働かせ放題だった正社員の働き方ができなくなりました。より高い経営効率を求めるために、需給予測のコントロールをかなりシステムに頼り、現場を回る正社員の数を減らしました。

その結果、正社員と非正規社員の「共犯関係」ともいえる「キツイ仕事は俺らやるから、家庭になんかあったら主婦のみんなは休んでいいよ。でも賃金格差はあるからね。」という性別役割分業の前提が崩れ始めています。

 

正社員は口減らしをされ、今はまだ非正規社員は守られています。が、徐々に非正規社員のマルチ人材化が進んでいます。事務職であっても、レジを打つように、みたいなことです。それぞれの領分を守ってきた彼女らの安定も少しずつ崩れようとしています。

そうしたそれぞれの処遇の変更に違和感を感じている社員も少なくありません。一言で言うと、「不穏な空気」が流れています。

 

リアル店舗の今後

今後リアル店舗無人化されるのか、といえば、たぶんなりません。

正直、決済システムだけが自動化されたところで、発注・品だし、整理整頓・掃除、サービス対応、自店調理などレジ以外の業務が山ほどあるからです。むしろレジにかかわる部分はほとんどおまけです。

最新のレジは本当に直感的なUIで、間違えることもほとんどないし手戻りも楽です。

www.icr.co.jp

スーパーのメインターゲットはほとんど、1~2人世帯の高齢者です。無人化なんてしたら、カゴを運んでもらえないし、決済も困ります。

そうした方への手厚い配慮は、地元で働く主婦パートタイマーで成り立っています。そして社員の数は、圧倒的にパートのほうが多く、その数は数万人に上ります。その力は経営上も決して無視できるものではありません。

彼女たちの立場は守られ、システム化によって優先的に切り捨てられているのは、バイヤーやバックオフィスの正社員のほうです。

しかし、その施策によって安定に保たれていたパワーバランスが徐々に崩れてきているのではないか?というのが、ここ最近の内部から見たスーパーマーケットの実情です。

 

共犯関係の解除

フルタイム正社員=高強度・高賃金、パートタイム非正規社員=低強度・低賃金という共犯関係は、組合も認めている事実です。

主婦である以上、フルタイムのように働くことはできないし、家庭優先でいつでも休める、時間も変えられる柔軟な働き方ができる環境はむしろありがたい、と思わせる構造作用がとても強固に出来上がっているのが、この共犯関係です。「賃金」による格差はそのために懲罰的に使われています。共犯関係をみんな暗に理解しているからこそ、それに納得して働いています。

 

会社としては、ずいぶん古臭いですよね。その共犯関係は崩すことができるんでしょうか。また、崩す必要はあるんでしょうか。

 

私の立場で言えるのは、「他でも稼ぐ」「家庭を大事に」「逃げ道を作る」です。

現状維持のままでもパートタイマーとして、月に10万前後の稼ぎは得ることができます。それだけで満足の人は、とりあえずそのままでいいのではないでしょうか。何十年とやってきた人の精神力はパートでも強いです。なんとでもなる、という強さを日々感じています。

それだけではワーキングプアだという人は、そこでのステップアップを目指すよりも、複業で+αの稼ぎ口といざという時の回路を持っておきます。そして「家庭」という土台を保ちつつ、いざというときの「逃げ道」を確保します。他のことも考えられないくらい、今の仕事が手一杯なら、少し余白を作れるようにします。

 

こうした個人レベルの解決策を提示する意味は、共犯関係があまりに強固で、中から解除するのが困難だからです。だから外に回路を作ります。複業は稼ぎのためではなく、他の社会と接続するために行います。

 

上記は、パートタイマーの戦略になりますが、フルタイム正社員にも同様のことは言えるのではないかと思います。共依存して共倒れしてしまう状況では、フルタイムの社員が仕事を失った時の方がダメージが大きいです。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

 

個人の行為論的な解決としては、このようなものになるのではないでしょうか。別の拠り所を持つことで、内面的な行為の規範を少しずらす、という感じです。

 

組織的な解決としては、経営者が音頭をとって壊していくしかないと思います。

 

あ、ちなみに今日も、調子上がらなくて会社を休みました。すみません。

 

ネガティブなメッセージを受け止める『82年生まれ、キム・ジヨン』

ポジティブな話をしたので、バランスよくネガティブな話をします。

 

タイトルにある『82年生まれ、キム・ジヨン』という本を読みました。

内容については、詳しくは下記の記事や、公式にも特設サイトが作られていますので、そちらから引用します。

www.cinra.net

www.chikumashobo.co.jp

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、韓国で2016年10月に初版2000部で刊行されました。キム・ジヨン氏(韓国における82年生まれに最も多い名前)の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生を克明に回顧していき、女性の人生に当たり前のようにひそむ困難や差別が淡々と描かれています。

そして彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始め――。彼女を抑圧しつづけ、ついには精神を崩壊させた社会の構造は、日本に生きる私たちも当事者性を感じる部分が多々盛り込まれています。
 韓国ではその共感性の高さから、国内だけで100万部という異例の大ベストセラーとなりました。

いわゆるフェミニズム文学ですが、ただそれだけであれば100万部のベストセラーにならないでしょう。本書は、精神が崩壊した主人公の主治医(精神科医)の手記という形で、淡々と彼女の身に起こったことが記述されています。それはその年代のごく普通の韓国人女性の歩んできた人生です。

彼女は、正社員として働き、結婚し、子どもも生みました。それだけ聞くと、とても順調な人生に思えるかもしれません。それにもかかわらず、なぜ彼女は狂ってしまったのか。彼女を狂わせたものはなにか。

彼女自身の人生を描くことで、彼女のまわりにある空気・社会そのものの輪郭をあぶりだしている、そうした作品です。言うまでもなく、彼女を狂わせたのは、女性への社会的な抑圧であり、それにがんじがらめになっている彼女自身を含めたすべての当事者です。

この物語に、特に救いはありません。

彼女はいかにして救われるのか

この物語が問いかけるのは、「彼女がこうならないために『私たちは』どうすればよかったのか?」です。

訳者あとがきからの引用になりますが、原書の解説を書いたキム・コヨンジュ(女性学専攻)は、

「彼女一人で解決できないことは明らかだ」とし、この本を読んだすべての人がともに考え、悩むことからすべては始まるだろうと示唆しています。

これは、「キム・ジヨン」だけの固有の問題ではなく、「私たち」の問題です。

タイトルに固有の名詞が使われているのは、固有の問題がそのまま普遍的な社会問題につながっていることを強調しています。

韓国も、日本と同様にジェンダーギャップ指数のランキングは144か国中、118位(日本:114位)と低いです。

こうした社会において女性たちがあげ始めた声は、女性嫌悪バックラッシュ(反動)などさまざま形で現れます。#Metoo運動の盛り上がりによって、女性を忌避したり、男性だけで集まろう、みたいなことが起きるようなものです。そうした反応が、この問題を解決するものではないことは、自明だと思います。

記者がセクハラに遭うなら、男性だけが記者になればいい、というのは被害者にも加害者にも社会にも向き合っていない態度です。

www.huffingtonpost.jp

 

ネガティブなメッセージを受けとめる

一般に、ネガティブなメッセージを発信する場合、小説という形を取ってそれが発せられることが多いです。人間の心の闇や社会の暗部などといったネガティブな描写や言説が通りやすいからです。

それらを発信すること、あるいは受け止めることもまた、ポジティブな言説と同様に必要なことです。

実際には、うまく逃げ道を作ったり、根性で乗り切ったり、用意周到に立ち回ったりと、たくましくあらゆる知恵や手段をつかって乗り越えている人もたくさんいます。でも本当にたくましいその姿は、普段あまり光が当てられないことが多いように思います。

それをポジティブに発信することも、ネガティブに発信することも社会にとって大切なことのように思います。「保育園落ちた、死ね」はネガティブな思いの発露かもしれませんが、「保育園落ちたけど、私頑張る!」じゃ届かない層に届けるためには必要な発信です。

 

社会がそれによって、1ミリでも動くなら、ネガティブなメッセージにも十分に意味はあるし、それを見ないふりせずにきちんと受け止めることをしたいと思います。

 

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

 

 

ポジティブなメッセージを味方に

先日、オヤノミカタという会社の松井さんと話す機会があって、非常に面白いなあと思ったのでご紹介です。 

www.oyanomikata.com

何してる会社なの?

オヤノミカタっていうくらいだから、なんか子育て事業とか福祉関連のことやってるのかと思ったら、全然違いました。

ECサイトやったりイベント開いたり、いろいろやってるみたいですが、ほぼ営利事業がメインとのことで。基本的には企業のアウトソーシングの仕事を取ってくるというのが主な事業だそうです。

 

何で私と接点を持ったかといえば、ファザーリングジャパン関西のメンバーと共同で、クラウドファンディング「パパバッグ」を作ろう!みたいな企画をしているからです。

これについては、また今度書くとして。

 

いろいろしてるけど、なんで「オヤノミカタ」なの?というところを訊くと、「実は社員は僕一人だけで…」という話から始まりました。

ほとんどの業務は、関西在住のフリーランスに業務委託しているそうです。そのフリーランスをしている人の多くは、時間的・空間的な制約があって、短時間・在宅などの条件下でしか働けない育児真っ最中の親だそうです。

そういう人でも働ける会社にしようとしたら、今のこの形になった、ということです。オフィスらしいオフィスもなく、みんなバラバラに働いてる。

確かに、企業から仕事を取ってきてフリーランスの人に投げる、という業態であれば、オフィスも社員も要らないですね。距離の近いクラウドソーシングみたいな感じ。

 

「親の味方」になることなら何でもやる、と話していましたが、根幹となるのは、親の働ける環境を実現させ、実験的でありながらもちゃんと事業会社として成立させているところです。バラバラに働く人をまとめて一つ一つの仕事を完遂させて信頼を得るには、非常に高いマネジメント能力がないとできません。

 

松井さん自身も、仕事漬けの生活ののちに専業主夫になるなど、両極端な立場を経験されています。極端だけど、ある意味でバランス感覚を掴んでいる人なのだと思います。

 

いろんな働き方があっていい 

 度々、このブログでは書いていることです。

どんな生き方をしても、働き方をしても、よっぽど悪いことをしていなければ、尊重される社会がいいと思います。

lazyplanet.hateblo.jp

今は、いろんな業務ツールがクラウド化して、連絡手段も多様にあります。まとまった時間がとりづらい時期は助け合えて、たまに集まってあとはどこでも働ける、という環境を構築するための素材だけなら、十分にあるはずです。

 

そうした環境が整っている組織は、いろんな生き方・働き方をしている人が集まるようなとても多様性のある組織だし、それをまとめるのが本当の意味でのマネジメントであるように思います。同質的な集団をまとめるだけなら、それほど難しいことではありません。それは会社に限った話ではないですが。

 

先日も書きましたが、そうしたインクルーシブな環境のある組織は強いです。そういった組織がもっと増えたらいいな、と思います。いろんな働き方や生き方が肯定されるような場所はまだまだ少ないです。

lazyplanet.hateblo.jp

 

ポジティブなメッセージ

こんな記事を書きたくなったのは、ポジティブな刺激を受けたからで、それがこの二人の記事です。

www.tsumako.com

www.gu-gu-life.com

仕事にやりがいを感じていて、それでも諦めざるをえず専業主婦をしている、という立場にありながら、お二人とも全体的なトーンが非常に明るくて前を向いている感じがとても素敵です。

母親が、仕事を辞めないで続けることも、子どもに大事なメッセージを与えると思う。

けど、母が、仕事を辞めるという決断をしたことも、きっとメッセージになる。ポジティブなメッセージ!

 (id:umet)

マイナスな要因で人生が変わったけど、意外と悪いことばかりじゃないし、何なら今楽しいよ、みたいなね\(^o^)/

 

片意地張る必要がもう無いじゃない、私達!

「意地」や「周囲の目」「思い込み」とかから開放されたから(-ω-*)

(id:gu-gu-life)

実際には、自己肯定に至るまで、いろいろな葛藤や辛い思いも抱えていたことと思います。でもこうしたポジティブなメッセージはとても勇気づけられます。「主夫」という立場もまたとても脆く、肯定されることが少ないから。

 

私はと言うと、極端に自己肯定感の低い人間です(妻に言わせると)。いや、単純に体力や精神力がないだけなんですが、HPもMPも低い人間って、賢さや素早さみたいな能力値が高くても、あんまり戦いの役に立たないですよね(何の話だろう)。

だから、普通に戦うことはできなくて、でもなにか違う戦い方を見いだせたらいいなぁと思って、今日も生きています。

 

ポジティブなメッセージを発信することは私にはまだまだ難しいのですが、それでもそういう味方がいるんだと思うと心強くて、ちょっと頑張ろうと思いました。