京大卒の主夫

京大は出たけれど、家庭に入った主夫の話

ランドセルとラン活のはなし

先日、娘のランドセルを予約購入しました。

 

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※実際に購入したものとは異なります。

 

ここ数年、ランドセルの購入開始時期が6月と早まっており、人気のあるブランドのランドセルは予約殺到になる等、ランドセル商戦の激化が起こっており、そうした現象がなんでも面白おかしく名前を付けたがる人達によって「ラン活」と名づけられています。

 

そんなラン活のはなしです。

 

私個人の結論を初めに言いますと、

「ランドセルなんて安いもので構わない。ただし、ノイジーな周りの声に親も子も耐えられるのなら」

です。

 

ラン活ってなんだ?

「ラン活」って言葉が広まって、ランドセル購入における親の行動様式の変化が取り上げられるなど、メディアのヒートアップが始まったのは、おそらく一昨年くらいからではなかったかと思います。

昨年は、土屋鞄のランドセル購入サイトがアクセス過多でダウンし、鞄工房山本では店舗に数時間待ちの行列ができるなど、いかにも取り上げやすい現象が起きたため、広くそのことが知られるようになりました。

 

鞄工房山本のランドセルは、今年もすでに30分で完売となったようですが、展示会の会場を広めの廃校や昆虫館などを借りて行うなど、混雑解消に取り組んだようです。

土屋鞄も昨年のようなアクセスの集中を避けるため、デザインごとにネット注文の開始時期をずらしています。

 

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我が家のラン活のはなし

今年、ランドセルを購入する親の立場としては、6月の予約開始というのは、あらかじめ知っていた情報でしたので、新年度明け4月から、様々なメーカーのパンフレットを取り寄せていました。

5月末から展示会が始まるので、それに足を運び、2~3メーカーのものを実際に子どもに背負わせて子どもの好みと親の価値観をすり合わせて、6月初めに購入に至りました。

一度決めてしまえば、もう情報に振り回されることはありませんので、納入まで待つだけです。

 

と、たったこれだけの話なので、とても「ラン活」というようなものでもありません。

 

6年間使うそれなりに高価なものを購入するのに、各メーカーを比較し、実物を確かめて、適切な購入時期に好きなものを予約する、という普通の購買行動だと思っています。

 

なんで騒がれているのか?

いくつか要因は考えられますが、とりあえず三つ。

 

一つは選択肢が多様化していること。

以前、ランドセルの色は男の子は黒、女の子は赤、と決まっていました。でも、今はキャメル、ピンク、水色、青、緑、ラベンダー、など自由に色が選べるようになり、デザインも背面や側面に刺繍が施されるなど、同じ「ランドセル」でも統一規格でなくなってきています。

機能面もさまざまに改良されています。自動で開閉する錠前、左右に動く肩ベルト、柔らかく蒸れにくい背あてクッション、A4フラットファイルが入る大容量の収納性。などなど。

 

そのため、多くの親が各メーカーの特徴や、子どもの好み、校区内のトレンド、さらには祖父母の意見などさまざまな面を考慮し、”うちの子にあった一番の”ランドセルを購入しなければならなくなりました。

 

二つ目は、最初に述べた商戦の早期化、ブランド系への過度な集中です。

 

三つめは、価格帯です。

セイバンのカタログに付属されていた『2018年度最新版ラン活応援BOOK』によると、約半数の人が5~7万円で購入しているようです。

総務省の小売物価統計調査を見ると、2017年4月で約45,000円となっていますので、調査の母体によって多少異なりそうですが、5万円程度とみてよいでしょう。

ランドセル工業会のサイトを見ると、年々価格帯が上昇しているのがわかります。

ランドセルの価格・今昔|ランドセル・ヒストリー|ランドセル工業会

先ほど述べたランドセルのデザイン・機能の多様化、あるいは高機能化といったことが価格の上昇につながっているものと思われます。

 

予約の殺到した土屋鞄や鞄工房山本のランドセルの価格帯は、6万円~10万円です。正直、肌感覚として、とても高いです。

誰もが購入する学用品がなぜこれほど高いのか、という冷静な声がメディアによって拡大・拡散されても仕方がないところだと思います。

 

「ふつう」が高い

実際に、2万円以下の低価格で購入することも可能です。季節を問わず、楽天などのネットショップには旧年度のモデルのランドセルなどがアウトレット価格で売っています。在庫を抱える2月、3月ごろであれば、1万円以下でも日本製のランドセルを購入することは可能です。ただし、その場合、色や機能など好みのものを選ぶことはほぼできないかと思います。

多くの新品のランドセルには、壊れたときに無償で修理・交換してくれる6年保証が付いています。こうしたアウトレット品には、それが付かない場合があることも、注意が必要です。

また、中には本当に劣悪品も存在するようなので、それなりの情報リテラシーを持っていなければ、手を出さない方がいいでしょう。

 

平均価格帯のランドセルは、日本製、6年保証、トレンドを踏まえた設計など、抑えるべき点は全て満たしており、その時点でいわゆる「ふつう」のランドセルです。

そこに、さらにプレミアを付けようとすれば、大人びた雰囲気の手作り職人による美しいランドセル、になり価格も7万円を超えるものになります。

「ふつう」が5万円、「他人よりちょっといいモノを」で7万円です。

 

私の普段使いの鞄が25,000円で今年4年目なことを考えると、首を傾げてしまいます。

小学校生活は、そんなに過酷な6年間なのか。その価格でないと耐えられないのか。大いに疑問です。

 

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※私のカバンです。

周りの声、周りの目

それでも、色もデザインも機能もこだわらなければ2万円以下で買えるでしょう、時期もギリギリに買えばもっと安くなるでしょう、といえば確かにそうです。

 

そのとき、親子に襲い掛かるのが周りの目と周りの声です。

卒園が近づくと、必ずランドセルの話題が親同士でも子ども同士でも始まります。ランドセル何色にした?どんなやつ?、と。

「え、まだ買ってないの?私きれいなピンク!」「私は水色ー」といった声があるなか、6歳の子どもは自分のランドセルが何色であるか分からず、手もとにも無いという状況に耐えなければなりません。

 

「ネットで古いモデルのを1万で買ったよ」「ヤフオクで落とした」等と、祖父母に報告します。「おお、良かったな、安くええもん買うて」となればいいのですが、たいていの場合、怪訝な顔をして「かわいそう」なんて言われても素知らぬ顔をしていられる忍耐力が、親には求められます。

 

夫婦間で意見が割れたときなど、さらに面倒です。

安いのを買おうと妻が主張すれば、「俺の稼ぎが悪いと思われるだろ」と反論する夫。

あるいは「なんでもいいだろ、安いので」と主張する夫に「かわいそうだから”ちゃんとしたの”を買ってあげて」と泣き出す妻。

 

傍から見る分には、最高に面白いかもしれませんが、当事者からすれば面倒なことこの上ないです。

 

なんで、ランドセルひとつでこんな思いをしなければならないのか。

じゃあ5万円を出して「ふつう」を買えばいいじゃないか。

 

そんな消費者心理につけこんでいるランドセル業界の高笑いが聞こえてきそうです。

 

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まあ、実際なんでもいいよ

以上、わりと一般論を書きましたが、実際どんなランドセルでも子どもは背負って学校行くし、周囲が自分達にそんなに気に掛けるなんて全部気のせいです。

 

個人的には、今の子はいろんな色のランドセルを選べて羨ましいなぁと思います。選択肢が多様な社会は良いです。

ジェンダー論でよくある話ですが、赤なのか黒なのか、みんな同じ一つの色にするんじゃなくてそれぞれ好きな色で好きなものを選べばいい、と思います。

「ランドセル」という形は統一されているものの、いろんなデザインのものをそこから選べる、というのも楽しくていいなぁ、と。

 

決められた色ではなく、好きな色で、自由に小学校生活を楽しんでくれたら何よりです。

 

 

ちなみに、わが家が購入したランドセルの価格は50,000円です。

「ふつう」です。